52/60
第14章 一度生じた歪みは 1
一度生じた歪みは、そう簡単に修復できない。その歪みは次第に大きくなり、やがてその場にいる人間をも飲み込み、歪みの一部にしてしまう。
母が去った時に学んだことだ。
ただ、今の自分であれば何かできるのではないかと思っていた。できるようになっていると、錯覚していた。
再び問題に直面して、その勘違いはすぐ正された。ただの自惚れだと。この歪みに立ち向かう方法を、自分は持っていない。
そもそも、この歪みに立ち向かう方法なんてあるのか。松本先生は自分で解決するしかないと言ったが、解決しない問題や、どうしようもない問題は、いくらでもあるはずだ。
ああもう、面倒くさい。
結局、人とは一定距離を取った方がいいのだ。それでも今の時代生きていけるし、何も問題ないだろう。
けど、それでは、あの日に戻ってしまうだけ。
そしたら、この胸に詰まる不快な感情はどうなるのだろうか。
ずっと消えないままなのだろうか。
夏休み前から始まったこの思い悩みは、何の意味もなかったのだろうか。
母が去ってからのこの二年半は、あってもなくてもいいようなものだったのだろうか。




