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シーグリーンは死に場所を探していた。
肉体を失ってから、シーグリーンは眠ることも食事を取ることもできなくなった。声帯を失っているため、寂しさと愛情を訴えるために鳴き声をあげることもできなくなった。孤独な夜は、形を変え続ける屋敷の中をひたすら歩き回り、時折骨と骨を擦らせ、打楽器のような音を立てることしかできなかった。そして、自らの身体の衰え、そして自らの死期を悟ったシーグリーンは、魂の安らぎを求め屋敷の中を歩き回り続けている。
暗い廊下を渡り、開いた扉の隙間から部屋に潜り込み、シーグリーンは屋敷のありとあらゆる場所を歩き回った。しかし、いくら探しても、シーグリーンが求める死に場所は見つからない。それでもシーグリーンは歩き続ける。骨と骨を擦らせながら、カラカラと愉快な音を立てながら。
そして、屋敷にて新しい生命が産み落とされた同時刻。シーグリーンは、照明の切れた長い長い廊下を渡り、わずかに開いた扉から突き当たりの狭い部屋の中へと入っていった。扉の先には小さな階段があり、シーグリーンは躊躇うことなくそこを登っていく。階段を登った先の部屋には、蓋の空いた一人分の棺桶が置かれていた。シーグリーンは何かに導かれるようにその棺桶へと近づいていく。部屋の中を窓の隙間から拭いてくる冷たい夜風が吹き抜け、部屋に飾られた造花が芳醇な匂いを発している。五感を失ったシーグリーンはそれらを感じ取ることはできなかったが、それでも、シーグリーンは何かを感じ取っていた。五感でも感じ取れない何かを。
シーグリーンがカラカラと音を立てながら棺桶の縁に登り、中を覗き込む。棺桶の中には、今は亡き主、オリーブの遺体が、枯れることのないすみれの花に囲まれて納められていた。シーグリーンは鳴き声でオリーブに呼びかけようとしたが、骸骨になった今の姿ではどうすることもできなかった。
一段と冷たい夜風が部屋の中に吹き込み、風の中で気流を生み出した。棺桶の中のすみれの花が、風に吹かれて左右に小さく揺れた。その瞬間、シーグリーンはこの場所が自分の死に場所であるということを悟った。シーグリーンは棺桶の縁をまたぎ、ゆっくりと亡き主人の胸元に立つ。そして、何かを求めるように顎をあげ、天を仰いだ。
シーグリーンの尾椎が骨盤から外れ、オリーブの身体の上に落ちる。それを合図に、肋骨が一本、一本と崩れ落ち、次に脚の骨が外れていく。首の骨がバラバラになり、そしてシーグリーンの頭蓋骨が天を仰いだまま落っこちて、そのままオリーブの胸の上に転がった。
こうしてシーグリーンは息絶えた。すみれの匂いと夜風が吹き込む部屋の中で、今は亡き主人の胸に抱かれるように。




