連れ自殺
「ひっく、私もう嫌だ。私、死にたい。」
「カナちゃん。」
カナちゃんはクラスメートから酷いイジメを受けていて、とうとう耐えきれなくなったらしい。私はカナちゃんとは子供の頃からの親友だが、隣のクラスだから休み時間以外は助けるのも難しい。
「ナ、ナオミちゃん、一緒に死んでくれない?」
「えっ?」
カナちゃんから突然のお願い。私は別に死にたくないんだけどな。
「お願い、ナオミちゃん。一人で死ぬ勇気なんて無いの。だから一緒に死んで。」
中々のお願いである。でも親友の頼みだから仕方ないか。別に特別この世に未練とか無いし。
「うん、いいよ。じゃあ、ベタに屋上から飛び降りようか。」
「ほ、本当に?」
「うん、だって私達は親友でしょ。親友が苦しんでるんだから分かち合わないと。今日死ぬ?」
「うん、今日死にたい。」
「そっか、じゃあ死のうか。」
お父さんお母さん、先立つ不幸をお許しください。
こうして私達は夜になるのを待って、学校に侵入し、鍵を壊して学校の屋上に上がった。
屋上の縁に二人並んで立ち、二人でしっかりと手を繋ぐ。カナちゃん、手が震えてるけど大丈夫かな。
「大丈夫?カナちゃん。」
「だ、大丈夫!!怖いけど、イジメられるよりマシ!!」
「そっか、じゃあ飛び降りようか。」
「う、うん。」
ちょっと自殺するには軽すぎるかな?でも軽かろうが重かろうが飛び降りれば死ぬことに変わりはない。
「せーので行くよ。準備は良い?」
「・・・わ、分かった。じゅ、準備良いよ。」
「よし、せーの!!」
こうして私は飛び降りた。落ちていく感覚は不思議だったけど悪くはない。バンジージャンプってこんな感じなんだろうね。まぁ、自殺だから紐なんて付いてないんだけどね。
"グシャ!!"
痛い!!どうやら体のあちこちが潰れたみたい。口から血がゴブァと吹き出した。
でもこれぐらいは想定内。一つ問題があるとすれば、隣にカナちゃんが居ないことぐらいかな?
どうしてあの子は手を離したんだろ?どうしてあの子は飛び降りなかったんだろ?どうして私だけ死にそうなんだろう?
・・・そっか、怖くなったのね。カナちゃんは本当に臆病だなぁ。
私は少しおかしくなって笑ってしまい、笑ってる内にこと切れた。
次に私が目を覚ますと、そこはお花畑であり、目の前には川が流れている。きっとこれが三途の川なんだろうな。
「よぉ。」
いつの間にか近づいていた男の人から声を掛けられた。頭に白いタオルを巻いた、青い甚平姿の無精髭の男の人だ。
「アナタは誰ですか?」
「俺はここで船頭をやってる男だ。そこに船があるだろ?」
「あっ、はい、ありますね。」
「アンタには、今からアレに乗ってもらう。んで、その先の役所で閻魔大王様に裁いてもらうわけだ。理解できたかな?」
「了解です。でも少し待ってもらえませんか?友達がすぐに来ると思うんです。実は連れ立って自殺しようって言ってまして。」
「あんたの相方なら来ないよ。」
「えっ?」
船頭さんの言っていることに首を傾げる私。どういう意味だろ?
「アンタの相方は逃げちまって、今は家の自分の部屋でガタガタ震えてるよ。ありゃ、自殺なんてする度胸無いぜ。」
あー、逃げちゃったかカナちゃん。あそこまで行っといて逃げるとか、凄いなぁ。
「分かりました。行きましょう。」
「軽いな。アンタ恨み言の一つでも言わないのか?別に死にたくないのに、友達の為に死んだんだろ?」
情報通な船頭さんだ。うーん確かに少しムカついたけど、憎い気持ちは不思議と湧いて来ない。
「カナちゃんって、きっと私を殺してしまった罪悪感に耐えきれないと思うんです。イジメだって無くならないでしょうし、だから、きっとその内に一人でも自殺しますよ。文句はその時に言います。」
「そっか、考え方が凄いな。」
「えぇ、それに自殺したら地獄行きなんでしょ?血の池地獄に釜茹で地獄、針山地獄も辛そうですし、先に体験して辛くならないコツをカナちゃんに教えてあげたいですね。」
「コツか・・・そんなこと言う奴初めて見たよ。スゲーな姉ちゃん。」
「そうですか、なんだから照れますね♪」
頭を掻きながら私は笑った。褒められるなんて中々無いことだから嬉しいな。
「でもよ、もしかしたらアンタの相方がそのまま生きて、天国行きになるかもしれんぜ。」
「あー・・・・その時は。」
私は口角を上げて、ニッコリ笑顔でこう答えました。
「どんな手を使っても、アイツを地獄に引きずり落とします。」




