第十四エロその4
「死ぬかと思った。」
息を整えつつ助態が言う。
純純が助態の背中を擦りながら何度もお礼を言っていた。
「勇者様本当にありがとうございます。いつも私たちのために囮を買って出てくれて。」
「…?」
背中を擦られながら助態は純純をまじまじと見てしまった。
あれをどう見たら、自分から進んで囮になっているように見えるんだ?助態は純純の目は節穴なんじゃないか?と訝しんだ。
「で?くびちとぱいおとルブマは何やってんだ?」
助態は先に逃げていた純純たちを追っただけだ。
前回来た時は、リスの穴より先はすぐに雪に埋もれてしまって、よく分からなかったが、どうやらごつごつした岩が多い岩場のようだ。
助態、純純、もふともの先の大きな岩の向こうで、どう見てもくびち、ぱいお、ルブマがモンスターと戦っていた。
「モンスターと戦ってるんだ。」
軽い感じでもふともが言う。
「そうか。俺もそんな感じがしたんだ。…で、この目の前にいるのは?」
目の前の白色のスライムを助態は指さす。
「モンスターです。」
丁寧に純純が答える。
「あぁそうかよ!」
近くにあった大きめの岩をスライムに叩きつける。
「スライムに打撃系は効かないよ!」
もふともが制止するが遅かった。
助態が岩で押しつぶすと、白いスライムの液が辺りに飛び散り、それぞれが白いスライムとして復活した。
「スライムって無敵なの?」
驚きながら助態が聞くが、純純は首を左右に振る。
「そういうわけじゃないんですけど、魔法攻撃でないと倒せないんです。」
「他にも火で炙るとか水で流すとかあるけど、こいつは粘着スライム。ただ引っ付いて傷ついた箇所から生き物の体液を吸い尽くすヤバいやつだ。」
もふともが、自分の体に引っ付いた粘着スライムを剥がして遠くに捨てる。
「近づけなければいいってことか。酸スライムに似てるな。」
助態は木の棒で、スライムを遠くにそっと押しやる。
「大抵のスライムは近づかなければ問題ないんです。」
純純は恐る恐るスライムをつまんでは投げるを繰り返していた。
そのため、遠くで粘着スライムが増えていた。
「純純、ちょっとストップ。」
ぱし。と助態が純純の手を取って投げるのをやめさせる。
どうやら無意識だったようだ。
純純は顔を赤らめながら、ごめんなさい。とか細く言った。
どうやら手を握られているのが恥ずかしいようだ。
「やっかいなのが発情女たちが戦っているスライムさね。雷スライムって言ってさ、遠くからも攻撃できる上に好戦的。岩場を利用してなんとか攻撃を防いでるけどいつまでもつか…」
純純の手を握る助態の手を離させながら、もふともが解説する。
「更に悪いことに、粘着スライムを吸収してやがんのさあいつ。」
あいつ。と言ってくびちたちが戦っている雷スライムを睨む。
「え?ちょ、ちょっと待って。スライムって吸収もできるの?」
慌てる助態を見てもふともは目を丸くする。
「当然だろ?分裂ができるんだから合体もできる。同じスライム系統なら別種族でも吸収合体もできる。吸収合体したら当然その特性も受け継ぐ。」
「どうやらこの辺には、スライムの巣って呼ばれるモンスターの住処があるようなのです。前来た時はなかったので、新しくできたんだと思います。」
困惑している助態に純純が付け足したが、助態の思考は追いつかない。
分かっていることは、粘着スライムをこれ以上雷スライムに吸収させてはいけないということ。