第一エロその4
湖を背にして草原方面に数時間歩くと村があった。
純純はこの村出身のようだが、異世界転生特有なのか、身寄りはいなかった。それどころか友達や知人もいなかった。
『異世界転生ってこんな感じなの?』
助態は少し疑問に思ったが、深く考えてもしょうがないと思い、考えるのをやめた。
「まずはこの海藻とか貝を売ってお金にして飯を食おう。」
純純の案内で換金所へ向かう。
「あいよ!全部で100エロスだがどうする?」
助態には100エロスがどの程度なのかさっぱりなので、全てを純純に任せた。
『通貨の単位がエロスって、モロ俺の欲望の影響だろうな…』
「この貝とか海藻は食べられるんじゃないですか?」
純純が交渉している。
結果、全部で500エロスの値がついた。
「換金って交渉が当たり前なの?」
換金したお金で茹でたイモを頬張りながら助態が訊く。
「最低限の金額しか提示されないから、交渉するのは当たり前よ。」
助態と純純の後ろからやや甲高い声がした。
振り向くと、丈の短い真っ赤のローブを身に纏ったやや胸の大きなお姉さんが居た。
お尻はキュッとしていてくびれもある。スタイル抜群のお姉さんだ。
赤いロングの髪を掻き上げて、赤い目で助態を見据える。
「あなた。勇者ね?」
ずいっと、助態と純純の間に割って入ったお姉さんは、くびちと名乗って一緒にパーティーを組もうと提案した。
「そこの小娘が一緒でもいいわよ。どうかしら?」
助態の腕に絡みついて、それなりの大きさの胸を助態の腕に押し当てながら助態の顔を覗き込む。
反応を楽しんでいるようだ。
助態の隣では純純が頬を膨らませていた。
「勇者様。パーティーを組む必要はあるんでしょうか?」
純純がくってかかる。
「あら?私と組むと戦闘が楽になるわよ?魔術師ですもの。」
オホホと笑いながらくびちが言う。
「必要ありません!私と勇者様だけで十分です!」
「でもねぇ。勇者とヒロインじゃ戦闘で使いものにならないでしょう?」
「ん?ヒロインって?」
2人の会話に助態が割って入る。
「私のジョブです。勇者様のお供をするのが役割の職業です。」
自分を指さしてにっこり純純が微笑む。
「こんな小娘がヒロインなんて腹立たしいけど仕方ないないわ。世界の総意だし。それよりも私をパーティーに入れて?絶対に役に立つから!」
強引にくびちは助態と純純と共に旅をすることになった。
「とりあえずもう少しお金を稼ぎませんか?」
納得していない顔をしながら、純純が提案する。
「あら。私お金なら少しは持っているわよ?私をパーティーにしたメリットがここでも出てきたわね。」
オホホと笑いながらお金をちらつかせる。
その時だった。
しゅっと何か黒い影がくびちの横を通り、その後に風が吹いた。
と思ったら、くびちが見せびらかしていたお金が消えていた。
「なーんだ。1000エロスじゃん。」
ビキニのような服装をした銀髪ショートの女が残念そうに言う。
下に履いているひらひらのスカートが、まだ揺れている。
「私のお金よ!返しなさい。」
くびちが怒るが女はどこ吹く風だ。
「アタイが盗んだものだよ?もうアタイのものっしょ。」
そう言って走ろうとする女を純純が呼び止めた。
「待ってください。それはくびちさんのものです。くびちさんは確かに勇者様をハレンチな体つきで誘惑した酷い人ですが、それでもお金を盗むのはよくありません。」
「なーに言ってんの。そんな真面目に生きてたら損しかしな――」
女は言いながら純純の方を向き、純純を真正面から見た時に言葉が止まった。
「か…可愛い…」
吊り上がった灰色の目の中がハートになっているようだった。
「ア!アタイも仲間に入れてくれよ!盗んだ金は返すからさ!ね?いいだろう?アンタ名前は何て言うんだい?アタイはもふとも。」
ぐいっと、盗んだお金をくびちに押しつけて純純に名前を聞いている。
助態は訳が分からないという様子でくびちを見ると、くびちも当惑した顔をしていた。
「あ…あなたもしかして…」
やや困惑しながらくびちが言う。
「その小娘に惚れた?」
まさかという言い方をしつつも、やや決定的な言い方をくびちはした。
「ほ?惚れた?女のアタイが女に惚れるわけないじゃない!確かに可愛いのは認めるけど…」
最後の方はもごもごしながらもふともと名乗った女が言う。
こうして、急遽助態と純純の仲間が2人も増えることとなった。