第一エロその2
日本で言えば春から夏にかけての気温な上に昼間で太陽も出ていたため、助態の服や髪の毛はすぐに乾いた。
「何で水浴びなんかしてたの?」
「実は、モンスターに服を汚されてしまったのです」
「? 服が汚れたなら拭けばいいじゃん」
「最初はそうしていたんです。ですが、汚れカラスはしつこいんです」
『汚れカラス? 変な名前のモンスターだな』
そう思いながらも助態は純純の話を聞いていた。
「最初は私の服の上におしっこをかけられたんです」
そう言いながら、やや丈の短い白のワンピースの裾をフワッと持ち上げた。
「すぐに逃げて葉っぱでおしっこは拭きとったのですが、髪の毛に唾液をかけられてしまって……凄く気持ち悪かったので水浴びをしたんです」
「その汚れカラスって強いの? とゆーか倒したの?」
助態の疑問はもっともだ。
倒していないならば、洗ってもまた現れる可能性がある。
「危険度はDなので強くはないです。倒してはいないのですが、走って逃げたら追って来なくなりましたね」
そう言えば。みたいな感じで純純は答えた。
「ってことはまた襲ってくるかもしれないんじゃないのか?」
「今は勇者様がいるから平気です」
「いや。俺だって戦ったことすらないよ? 武器も持ってないし」
「まぁ。勇者様武器はどうしたのですか? 伝説の聖剣は?」
驚いたような表情で純純が助態を見る。
『聖剣は聖剣でも、股間の聖剣なら持ってるけど戦いには役に立たないだろうなー。女の子との違う戦いなら役に立つのに』
などとしょうもないことを考えていた助態は、辺りをキョロキョロ見渡して、ちょうどいいサイズの木の枝を見つけた。
「とりあえずないよりマシか」
拾ってジーンズのベルトにとりあえず挟み込んだ。
すると2人の前に2匹のウサギが現れた。
「あれは?」
すかさず助態が訊く。
「発情ウサギです」
「は? はつじょう? まぁいいや。食えるのか?」
「食べれます」
そうと決まれば! と木の枝をベルトから引き抜く。
まるで侍が鞘から刀を抜くみたいに。
「あの……勇者様?」
「何だね?」
助態はキャラに入っていた。すごんだ返事をする。やや歌舞伎っぽくも見えた。
「その……木の枝でどうやってウサギを捉えるのですか?」
「え? だって純純狩りするんだよね? 武器とかそういうのないの?」
「ありません」
純純が笑顔で答える。その可愛いさに助態の心臓が跳ねる。
そんな2人の目の前で2匹のウサギが交尾を始めた。
「はわわわわ!」
途端に純純が顔を真っ赤にし始めた。
「どしたの?」
真顔で訊く助態に純純の上ずった声が返る。
「こ……こんなところでハレンチな! いけません!」
純純の大声でもウサギは逃げ出さない。
「ハレンチ? 発情って付くくらいだから年中こんなことヤってるんじゃないの? 人間同士でもあるまいしこんなのセッ――」
パァン!
純純が助態を大きくはたいた。
「この変態! スケベ! ケダモノ!」
一言一言に嫌悪感を込めて、助態の左右の頬をビンタする。
「ちょ……ちょ……落ち着こう?」
手を握ってビンタを制止すると、ようやく純純は落ち着きを取り戻してきた。
「取り乱して済みません!」
さっ。と助態が握っていた手を振りほどきながら純純が頭を下げる。
「私……何と言いますか、こういうことに免疫がなくて……苦手なんですそういうエッチなこととか……」
『あれぇー? 俺の望む世界になるんじゃないの? エロハーレムは? もしかしてこの子を攻略しないとエロもハーレムもお預け?』
やましい気持ちを抑えながら助態が訊く。
「まぁ。それは置いとくとして、どうやって狩りをするつもりでいたの?」
「石を投げるとかですかね?」
顎に人差し指を当てながら答えた。
「無理に決まってるだろー!」
助態は思わず突っ込んでいた。
しかし純純は、そうですか? と首をかしげるばかりだった。
「そんなに言うならあのウサギを捕まえてみ?」
そう言って助態が指さす先には、ウサギはもういなかった。
とっくに逃げられたようだ。
「木の実でも探しますか?」
もう一度にこりと言われて、モヤモヤしながらも助態は純純と一緒に食べれそうな木の実を探すことにした。