第六エロその3
ホワイトアウト――
雪や雲などで視界が白一面になることを指す。
ずっと雪は止まず、助態たちは、何日も淫魔族が経営する温泉宿に足止めさせられている。
助態もいい加減足止めに飽き飽きしていた。
特にルブマの両親を気にしているわけではない。
早く冒険がしたいわけでもない。
単純に、足止めを食っている現状に飽きてしまったのだ。
『不謹慎だけど、何か起きないかなー。とか思っちゃうよなぁー。』
淫魔族が経営する温泉宿――願望の宿――
この世界の者ならば誰もが知っている常識。
しかしこの世界の者じゃなかった助態にはその常識はない。
もちろん全ての願望が叶うわけでもないし、ある意味伝説的なもの。
経営している淫魔族ですら、そんな迷信を信じていない。
でも助態は腐っても勇者。そしてこの世界は助態の願望でできた世界――
何か起きないかな?
という願望がたちまち叶うこととなった。
助態の「何か起きないかな」という声が頭の中に響き、続いて「その願い聞き入れた」という謎の声が頭の中を走り抜けた。
次の瞬間、ドーンという轟音と共に温泉宿の隣の山の雪が崩れ、雪崩が発生した。
「これは?」
慌てる助態の下にアンアンが走ってくる。
「勇者様!勇者様の願いが叶ってしまったわ。私たちも迷信だと思ってたけど、まさか本当に願いが叶うなんて…」
助態の手を引っ張ってアンアンが中庭に連れて行く。
どうやら助態の頭の中にした声は、アンアンの頭の中にもしたらしい。
それどころか、この宿にいた人全員の頭の中に響いたらしい。
「勇者様の暇だという気持ち、よく分かるけどまさかそんな願いが叶うなんて、勇者様はやっぱり何か持っているんだろうね。」
中庭まで助態を連れて来たアンアンがにこりと微笑む。
中庭には、雪崩が来ていたようだ。
それなのに被害はほぼ0だった。
その理由は、巨大な鬼が雪崩を止めていたからだ。
人間の3倍以上の背丈がある大鬼族が雪崩を止めたようだ。