第三十八エロその5
空が近い――
何度目かの小休止を終えて螺旋階段を登ってから数時間が経った。
ふと空を見上げたティーパンは、ようやく空に近づきつつあることに気が付いた。
「じきに魔界に着くかもしれない」
全員に警告するように言うと、すぐさまちあも空に近づきつつあることに気が付いた。
「空が近づいてきておる。突然急襲されるかもしれんから注意するのじゃ」
螺旋階段を登って自分達から空へ向かっているので、空が近づいてきているという表現は本来違うのかもしれない。
それでも、どんどん空に近づいているのが目に見えて分かるのは、今までゴールが見えなかった分メンバーにとっては光となっている。
更に助態とティーパンが懸念していた、空気が薄いもしくは無いということも、今のところ感じられない。
次第に視界が、空と同じ色のオレンジ一色になってきた。
オレンジ色が濃くなっていき、助態は空に入って行ったような奇妙な感覚に陥っていった。
同時に視界がどんどん悪くなってくる。
「足元が見えなくなってきている。階段を踏み外すなよ」
ティーパンがちょうど注意した時、助態が足を踏み外してルブマの短パンを脱がしたところだった。
「何をするんですか助態さん!」
ルブマのピンクのパンツは、オレンジ色の視界に遮られて助態には見えなかった。
「くそっ。見れなかった!」
助態が悔しがり、純純に殴られるお決まりの流れがあった。
もふともはヌルヌルに支えられながら慎重に階段を登っているのが、話し声から分かる。
「気をつけろ。少し右にカーブしているぞ」
「分かってる。うん。ありがとう」
ぱいおは後ろからくびちに支えられているようだ。
「あなたまた重くなったんじゃない?」
「なっ! 失礼っすよくびちさん。ウチは太ったんじゃなくて胸がでかくなったんす。ルブマさんには申し訳ないっすけど」
「なんでそこで私が出てくるんですか! 私だって少しは成長してるんですから」
などと言っているが、助態が知る限りルブマの胸が大きくなっている気配は全くなかった。
「モンスターの世界でもアンアンは襲われなさそうじゃな」
一番先頭を登っているちあが、ティーパンに背負われながら言う声が助態の耳に届く。
確かにアンアンは種族としてはモンスターに分類されるわけだから、人間を憎んでいるモンスターに襲われる可能性は低いとちあは推測している。
「どうかしら。人間と行動を共にしていることでむしろ裏切り者としてのレッテルが貼られているかもしれないわ」
アンアンがちあの推測を否定した。
「そうだね。確かに裏切り者って思われる可能性の方が高いかもね」
ティーパンもアンアンの考えに賛同した。
それもそうじゃの。とちあもそれに同意して頷いた。
そんなは話しをしていると、助態は階段がいつの間にか下りになっていることに気が付いた。
「あれ?」
助態の言葉に全員が気が付く。
「いつの間に」
「気がつかなかったのじゃ」
ティーパンは悔しそうにし、ちあは話ながらも周りに気を使っていたようだ。
メンバーの中でもベテランの2人が気がつかなかったのだ。助態たちが気がつかなかったのも無理がない。
永遠に続くと思われた螺旋階段は、気が付けば下りの螺旋階段になり、それもかなり低い位置からの下りになっており、螺旋階段が下りになってからは周りの景色が違っていた。
今まであった夕陽はなくなり、真夜中のような暗さだった。
「ここは魔界だ」
ヌルヌルの言葉通り、助態たちはいつの間にか自分たちでも気が付かない内に魔界へと足を踏み入れてしまっていた。