初めての一日の終わり
ガチャ
「ただいまー。リュード君から色々貰ってしまった♪また会ったとき何かプレゼントしよう」
るんるんな気持ちでリビングに入ると、確かに電源切ったはずの颯真が口パクしながらこちらを見ていた事に
私は固まった。
(あ・・・これは、いや確実に電源切り忘れたな・・・。)
心の中でしゅんとしていると、ご飯の匂いが鼻に届く。
「そういえば、なんか良い匂いがするね?」
そういえばと今更ながら思う。
「───ーー」
颯真は口をパクパクと動かしているが、何一つ聞き取れない。
「まずは修理しよっか。話はそれから」
彼はコクリと頷き、私の後を追った。
─自室─
私は電源を切った彼の口を開け、故障した電源共有ケーブルとリュードから貰った電源共有ケーブルを取り替えていく。
「・・・よし!出来た。これで治ったはず」
電源を入れると、ロボットはゆっくりと瞼を開けた。
「博士・・・。あっ!声がデテル」
おぉー!と一人で盛り上がる彼に、よかったと思いながら見つめる。
「そうだ博士、お詫びとイッテハなんダケド、オレスープを作ったんデス」
機械らしさのはにかむ様な素振りを見せた彼に、微笑ましいと思う。
「そうなのか!。ありがとう♪・・・早速いただいても良いかな?」
と聞くと彼は、大ぶりに頷いてキッチンに向かって走っていった。
ポツリと取り残された私は、ロボットに対して「優しいなぁ」と感じた。
─リビング─
オレは温めたスープを器に入れて、テーブルに運び器を机に置いた。
「ふふ、とても美味しそうだ♪」
博士は走って来たばかりなのか、少し息を切らしながらそう言った。
「では早速、いただこう」
椅子を引いて座り、両手を合わせて「いただきます」と一言。
「召し上がれデス♪」
ズズッと私は口の中に入れる、なんだろうシンプルなのにとても温かい気分になる。
「・・・・やるじゃん颯真。おいしいよ」
これは自然とでた言葉だ。
「!!お口に合ってヨカッタデス、博士。」
少し嬉しそうにする颯真を見ながら、スープをすすった。
・・・・・・。
鍋の半分位は私のお腹に入り、残りの半分はまた明日に残しておく事にしよう。
「ふう、ご馳走様。後は明日に残しときたいのだが」
食べた器を回収している颯真に、申し訳なく言うと
「了解デス!じゃあ鍋はソノママ残しておきますね。食べたい時はいつでもオレに言ってください」
どこか颯真が輝いている様に見えた。
それとこの数時間の内に、どことなく成長している・・・そんな気がした。
嬉しい反面うーんと心の中の奥底の謎のモヤモヤを抑えて、いつも通りの接し方で
わかった、と複雑な気持ちで返事をした。
「早速、洗い物に・・・」
「ちょっと待って」
「何ですカ?」
「確かに秘書として洗い物もできる様に、ならなければならない。でも今日は私も手伝おう」
「ありがとう・・・ゴザイマス」
ふっと一瞬目をそらす彼だったが、すぐにいつもの顔に戻って
「デハキッチンに行こう」
とそそくさキッチンに一足先に行ってしまった彼を追いかける様に着いていった。
が、なんであの時目を逸らしたのか。制作者でもわからなかった。
ジャーと水を蛇口から出す。
颯真は表面は水加工済みなのでそのままで洗い、
私も素手でジャバジャバと洗っていった。
「博士ノ好きなモノってありますか?」
「人に興味を沸くなんて、良いことだ。そうだねー、私は・・・・やっぱり内緒」
颯真はぶーと拗ねた。
「今度は逆に颯真は好きなのあるのかい?」
って聞いたら颯真は口をモゴモゴさせながら、こちらをチラチラ伺う。
「ご主・・・・。ヒミツです」
「颯真も秘密じゃないかー」
あはは!と私は笑いながら、最後のお皿を拭いて食器棚になおして、洗い物は終了した。
「さてこの後は、もう知っているかもだが、一応改めて私の家の中を紹介したいと思う」
「おー!」
パチパチと拍手が送られた。
「ありがとう颯真君。じゃあ着いておいで」
リビングから出て右側の通路を歩いて行く。
「ここの部屋は知っての通り、私の自室だ。それでもうちょっと先には図書室がある」
ピッとこの通路の先を指さす。
オレは博士が指さした方を見ると、この通路の奥に茶色い扉があった。
(あれが、図書室・・・ナニカ良い本トカあるのかな?そもそも使っても良いのかな?)
「図書室は好きに使ってくれても良いぞ。さぁ次だ」
心を読まれた!とオレは密かに思いながら
今度は此処から戻る様に進んでく。
しばらく歩いて行くと、さっき居たリビングを通り過ぎ。
そして次に見えたのは、博士と初めて外に出た扉が見えてきた。
ガチャリと博士は扉を開ける。
「どうぞ~」
ススッとオレに道を譲る。
二回目の外だから驚く事は無いだろうと思っていたが、それは違った。
「コノオレンジ色と赤色が混ざった色の光は・・・」
「それは、夕日だよ。太陽が沈む時間なんだ。確かに綺麗だけど、一瞬なんだよねー」
辺りを見渡したり、じーと夕日を見ている彼に
「夕日が沈むまで、見てみるかい?」
と声をかけた。
コクリと頷き
「明るい時と今、同じ景色デモ違うヨウニ感じます。」
「そうだろう♪中々良いもんだろう?夜は暗いけど、暗さを利用したイベントとかもあるんだぜ!」
「トテモ見てみたい!!デス」
「じゃあ今度見に行こうじゃないか!」
オレは博士の元気さと、イベントに心が躍り
博士の小指とオレの小指をオレから結んだ。
博士は、どこか恥ずかしそうに
「約束だよ」
と言った。
お互いに小指を離し、どこかむず痒い空気が流れ始めた時には夕日は沈んでおり、辺りは暗かった。
「ゴホン!じゃあ最後に部品倉庫の存在を知らしておく」
少し歩いた所の扉を博士は開ける。
するとそこには、沢山の電子パーツなどの部品が置いてある部屋だと一目見て分った。
「一応片っ端から、パーツの配置を教える。」
ニヤリと悪魔の様な笑みを浮かべたのを最初に、部品倉庫にある各種パーツのある場所を
丁寧に、そして時には雑談を交えて、教えられたのであった。
そして時刻は19時を回ったその時に、その長い説明は終わった。
「・・・・以上だ。」
博士は疲れ切っているのか、いつもより少し低音での一言。
「わかりました博士。任せてクダサイ」
その言葉を聞いて、ゆっくりOKサインを出す。
もうとうとう言葉が無くなった。
そして彼女はカモンと手のひらを動かした。
きっと着いてこい、と言うことだろう。
オレは何も言わずに、大人しく着いていった。
そしてオレは思った。
(博士・・・そんなに体力ナイノカナ?それともオレが体力の概念が、無いからソウ思うのかナ・・・)
と。
どちらにせよ、オレは博士を・・・いや彼女を守るだけ。
─自宅・リビング─
疲れ果てた博士は床にゴロンと寝転んだ。
「さて、最初の一日が終わる訳だけど・・・どうだった?この世界楽しそう?」
神妙な面持ちで、問いかけてくる。
「正直マダわからない事バカリデス。ダカラまだなんとも言えません」
正直に言った。
「それもそうだ!じゃあここで一応颯真の機能の紹介をここで。寝る前編!」
「一つ目、まず寝るときは、自分でスリープモードに切り替える事ができる。二つ目、タイマーをかけてスリープモードに入ると、その時刻になったら自動でアクティブモードに移行する。逆にかけ忘れると移行しないから、起きれない。まぁその時は私が起動する事になる。わかったかな?」
「わかりました!」
博士はよしよしと満足そうに頷く。
「じゃあとりあえず一旦ここで、自由時間といこう。私も風呂とか色々あるからね。あっ言い忘れていたけど寝るところは家の中なら何処でも良いよ。別に私の部屋でも良い」
ははっと笑っているがそれは、何となく不思議と気が引ける気持ちになる。
「よし、もう言うことは無いな。では私はそろそろ風呂でも入ってくるよ。」
そう言って、博士は去って行き、ポツーンと取り残された。
「オレはどうしようか・・・」
悩んだが今の所することも無いので、早い気もするが就寝することにした。
「寝る場所は・・・ここで良いカ」
早速教えられたタイマーを朝の6時にセットし、スリープモードに移行した。
「おやすみナサイ・・・ハカセ」
・・・・・・・。
──
「ふう、さっぱりした。・・・おや?」
風呂上がりの冷えたお水を取りにリビングに行ったら
「颯真、ここで寝ちゃったのか・・・。ふふっ、必要ないとは思うけど毛布でも掛けておこう」
タンスから畳まれた毛布を取り出し、颯真に掛けた後に
冷蔵庫から水を取り出し、電気を消した。
「また明日ね」
最後にそう言って自室に戻った。
ガチャ、と自室の扉を開ける。
「はぁ・・・疲れたな。でも、悪くなかったな」
自室の電気を消す為に、スイッチに手を伸す。
カチリ
「あー、そいえば夕飯食べてないや・・・。まぁ良いか、寝よ」
ベットにごろんと寝転がり、瞼を閉じた。
「おやすみ」