初めての外
(さて・・・名前も決まったし、次は人の街でも見せに行くか・・・・)
「颯真よ!早速だが、外の景色でも見に行かないか?私のお気に入りの場所を紹介してやる」
「博士のお気に入りのバショ・・・・!」
外の世界と博士のお気に入りの場所に惹かれて、首を縦に動かした。
「よし!決まりだな。暗くならない内に、今から行くぞ!」
「ワカッタ!」
(ココガ博士の家・・・・。頭の中にデータが有るのに、ナンカ緊張スル・・・・)
家の中を見回している内に、いつの間にか玄関についていた。
博士がギィーと扉が開くと、明るい光が差し込んできた。
「わぁ・・・暖かいなぁー。ナゼカ安心デキル」
空から太陽の光が、線を描く様にこの地に差し込んでいた。
周囲は木々に囲まれていて、まるで二人だけの秘密基地みたいな感覚になる。
「こ・れ・が・外だ・・・・が、これぐらいで満足して貰っては困るなぁ?」
ニヤニヤと何か企んでそうな顔で、こちらを見て
「まっ、次の機会があれば、教えてやるよ」
と最後にウィンクして、村の出入り口の門まで歩いて行った。
「よくワカラナイケド・・・何か期待シテモ良いノカナ?まぁ、どっちにしても期待するケド」
そう一人で呟いて、オレは村の門まで走った。
カチャカチャ
ガチャン
「ふぅーやっと開いた~。しっかし、この鍵穴も古くなってきたなぁ。そろそろ替え時かぁ?」
鍵を束ねる輪っかに、指を入れてくるくる回した。
ザッと颯真が、ここに来たことを確認した。
「そんな、急がなくても・・・まだ間に合うぞ?」
息切れもせずに、余裕そうに立っている颯真。
「ナントナク・・・・走りたかったダケ」
「そうか」
私は木で作られた門を久しぶりに開けた。
下山道には、沢山の桜の花びらがヒラヒラと舞っている。
「わぁー!博士コレガ噂のサクラの花デスカ?」
クルクルと回りながら、落ちていく花びらを見ている。
「あぁ。それに現実で見るのも悪くないだろ?画像やデータとかで知っててもさ」
彼は一枚の花びらを、握りしめて言った。
「サクラは、オレの頭の中ではもうシッテタ。デモ、触れた事はナイなぁ・・・・」
相変わらず表情は変わらないけど・・・・どこか寂しそうにしている様に見えた。
「時間は一杯有る・・・・・つまりこれから一緒に外の世界を見に行こうぜ!」
無邪気に笑う彼女に、答える様に
「・・・うん!」
短く元気に返事をした。
桜が舞い落ちる、螺旋の山道を、スタスタと下っていく。
「あっ、博士見て!あそこニ動物がイル!」
道から外れた薄暗い林を指さした。
「おぉー、まじか!」
鞄から双眼鏡を取り出して、早速見てみると
何故かこちらを睨みつけている二匹のイノシシがいた。
「なにあれ?」
「イノシシです」
「うん、それは知ってるんだけど・・・・」
そう言って視線をイノシシ達に戻すが、その場所には誰も居なかった。
「あれ?おかしいなぁ・・・さっきまで居たのに。」
不思議そうに、双眼鏡の覗いているご主人の隣で
一応オレは周囲の音を探る。