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インスタント竹田ゆうじ

 さて、そろそろ自分について語ろう。

 これまで俺がどんな人間なのかについて、まったく触れて来なかったように思う。

 なぜなら別に語ることなどないからだ。

 俺は普通にどこにでもいる現代人。以上だ。

 しかし俺は変わった。

 俺はマンガの肉の姿をした女を食った。

 俺は人肉を食ったのだ。

 俺はカニバリストだ。

 特別な人間になったのだ。

 なんてことも別になかった。


 俺はもう1つインスタント恋人のタマゴを肉にして食うと、それ以上食うのはやめた。

 先が見えたのだ。残りのインスタント恋人のタマゴは7つ。このままでは7食頂いた後、食うものがなくなってしまう。


 そして俺ははたと気がついた。

 残りのインスタント恋人のタマゴは7つ。

 7という数字。

 七人の侍。

 荒野の7人。

 刑事7人。


 これは7人の仲間を集めろという神のお告げなのでは?


 俺は家がない。金もない。知り合いは老婆がいる、しかも数えきれないほどの。しかしその老婆すべてから敵視されてしまっている。

 インスタントホームを買うには金がいる。しかし金がもしあったところで、店員はすべてあの老婆なので、売ってはもらえない。


 売ってもらえないならどうする?

 盗むしかないじゃないか。

 とは言え俺1人では老婆に太刀打ち出来ないであろう。


 仲間を作るのだ。

 そして結成するのだ、盗賊団竹田ゆうじーズ。


 俺は早速インスタント恋人のタマゴを橋の下の河原の平らなところに置くと、パスワードを唱えた。

 指でもにょもにょとクロスを切る。

 イメージしたのは恋人ではない。肉でもない。

 タマゴがキラキラと輝き出し、爆発した。爆風を伏せて避けると、俺は現れたそいつに言った。

「ようこそ、俺」

「ゆうじさん……好き!」

 目の前に現れた俺がくねくねと身をよじりながら言った。

 俺のイメージ通りに作ったので、オリジナルの俺よりもイケメンな俺だ。

「我ながらいい出来だ」

 褒めると、目の前の俺は恥ずかしそうに頬を赤らめ、イヤンイヤンと首を小さく振った。

「気持ち悪いからやめてくれ」

「だってぇ~……褒められると嬉しんだもん」

「お前は男だ。俺の影武者だ。老婆が殺しに来たらお前が代わりに殺されるんだ。いいな?」

「はい☆」

「ところでややこしいから名前をつけよう。お前の名前は竹田ゆうじMk.Ⅱだ。いいな?」

「嫌です」

「なん……だと?」

「もっと可愛い名前がいい!」


 面倒臭いので竹田ゆう子と名付けた。気に入ってくれたようで、なんだか1人でキュピキュピご機嫌な声を出してやがる。きもい。


 とりあえず仲間が1人出来た。コイツと一緒にババア強盗をするにはあまりに弱そうだったので、続けてもう1人作ることにする。

 強そうなのがいい。しかし戦闘力までイメージ通りに持って産まれて来るものだろうか。まぁ、やってみよう。


 俺は屈強なボディーにとても長い腕を持つ女戦士をイメージした。名前はフレディーだ。

 必殺技はその長い腕を鞭のようにしならせて全てを破壊する『ムチムチ・アックス』。

 イメージが纏まったところでパスワードを……。

「嫌だ。ゆうじさん、やめてよぉ」

 竹田ゆう子が俺を止めやがった。

「やだやだ! 恋のライバルの出現なんて、あたし許さない!」

 俺の顔でそんな乙女セリフを吐くんじゃねぇ。危うく撲殺しかけた。

 俺はゆう子を宥めることにした。

「いいか、ゆう子。これから作るのは彼女なんかじゃねぇ。バケモノだ」

「ば、バケモノ……?」

「そうだ。俺は仲間を7人集めて、あのクソ老婆どもと戦う。そのための戦士を作るんだ」

「じゃあ」ゆう子は鼻の下の無精ひげをゾリゾリもじもじといじりながら、言った。「恋人はゆう子だけって思っていいのかな……」

「それはダメだ」俺はきっぱり断った。


 やはりフレディーは後回しにして、まずは本当の恋人を作ることにした。

 絶世の美女を作り、ゆう子には鏡を渡して自分と見比べてもらい、諦めてもらおう。自分がどう見ても男だということを思い知ってもらおう。


 まずは名前を決めなければ自動的に御空ひかりにされてしまう。

 しかし俺の頭にはもうこれと決めた名前があった。海の上の空の星となったペラペラの紙みたいなひかりを作る時にどうしても思い出せなかった、あの名前だ。

 俺の大好きなアニメのヒロイン……。その名前を思い出していたのだ。


 ジューギスティヌ・オルディット。


 もちろん頭身の不自然さはイメージの中で補正した。

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