表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

あの日、わたしはあのひと言を口にしてしまった

ハルがわたしを心配してくれる度に、わたしは申し訳なくて胸がぎゅっとなる。


ハルがわたしよりも一学年下なのは、高校で留年しているから。

春佳さんのころの記憶が戻ってからしばらく、ハルは学校へ通えなかったらしい。


そのあいだに、春佳さんに所縁のある場所を彷徨っていたんだって聞いた。


あれから100年近くが経っていて、街並みはもちろん変わっている。

血縁はいるかもしれないけれど、その人にとって今のわたしたちは全くの他人。


たとえ見つけたとしてもどうしようもないって、身に染みてわかってる。


――だって、わたしも綾乃の記憶が戻ったあと、必死に綾乃の、春佳さんの、痕跡を辿ろうとしたから。


そして、そんなことしたって、春佳さんは生き返らないし、綾乃だってもう戻ってはこないって。


どこにも綾乃はいないし、春佳さんもいないって、嫌というほど実感してしまったから。


わたしも、とても、それまでと同じように学校に通うことなんてできなかった。

頭ではどうしようもないことなんだと理解していても、心がついていかなくて。


そのうち出席日数が足りなくなって、留年するか、退学するかの選択を迫られた。

そして結局、わたしは高校を退学した。


なんとかこれからのことを考える余裕ができたころ、高認(高等学校卒業程度認定試験)を受けて、大学も受験した。


だから今、わたしはこうしているんだけど……。


ハルは、どうやってふんぎりをつけたんだろう。

それを考えると、怖い。


綾乃のしたことは、どう謝罪しても、許されることじゃない。

そのせいで、春佳さんだけじゃなくて、ハルの人生すらめちゃめちゃにしてしまっている。


それなのに。


わたしとしての感情と、綾乃としての感情がごちゃ混ぜになって、わたしは今でも混乱してしまう。


罪悪感で息もできないくらい苦しくなることもあれば、ハルの優しさにすがってしまうこともある。


ハルを自由にしてあげたほうがいいと思っているのに、ハルを手放せないでいる。


卑怯で自分勝手なのは、綾乃もわたしも同じだ。


あの日――。


『綾乃さん? どうしたの?』


思いつめて春佳さんの住むお屋敷へ押しかけたわたしは、優しく微笑んでくれる春佳さんに向かって、言ってしまった。


『春佳さん、一緒に死んでください』


って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ