おれが一緒だから、平気でしょ?
おれとアヤが、ふたりで出かけることはあまりない。
アヤは人の多いところが苦手だし、おれも、アヤの部屋に押しかけてごろごろするのは好きだから、問題ない。
人目を気にせず、思う存分アヤを見ていられるし。
いや別に、人目があるからって、遠慮したりはもちろんしないけど。
今の時代、人前でべたべたしている結婚前の男女なんて、めずらしいものでもないし。
ただ、アヤがそういうのは絶対に嫌がるからしないだけで。
っていうか、いちゃいちゃなんて、ふたりきりで部屋にいるときだってさせてくれないけど。
――ともかく、そういうわけで、ふたりで出かけるのは結構特別なことだ。
電車から地下鉄に乗り換えて、スカイツリーを目指す。
スカイツリー自体は、近づかなくても、遠くからだって結構見える。
大学の屋上からでも、ちょうどそちらの方角にでかいビル群があるせいで見えないだけで、ビルがなければ見えるんじゃないかと思う。
昔は、こんなに高いビルなんてなかった。
当時はめずらしかった浅草十二階も、今となってはその辺のビルにすら高さでは負けてしまうんだな、と、今更ながらにぼんやりと思う。
平日の午後早い時間だからか、地下鉄はそれほど混んでいなかった。
隣に立つアヤは、ちょっと不安そうに眉間に皺を寄せている。
「大丈夫だよ」
「なにが?」
「なにがあっても。おれが一緒だから、平気でしょ?」
「そもそも、ただ電波塔の展望室までのぼるだけなのに、一体なにがあるっていうの。平気に決まってるじゃない」
アヤはそう言うけど、それが強がりに聞こえるのは、おれの気のせいかな。
昔のことを思い出して、またあれこれ考えてしまわないといいけど。
それでも、おれはアヤと一緒にスカイツリーに来たかった。
実はおれひとりだけで、スカイツリーの近くまで行ったことがある。
中には入らなかったけど。
前世の記憶は、生まれたときからあったわけじゃない。
高2のあるとき、ふいによみがえった。
それは昔、春佳と綾乃さんが死んだのと同じ日だった。




