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まだおれのこと好きにならない?
「ねえ、まだおれのこと好きにならない?」
フローリングの上に置かれたクッションの上に仰向けに転がりながら、頭の上の方にいるアヤを見上げる。
「しつこい」
ベッドに背中をもたれさせて文庫本を読んでいたアヤが、眉間に皺を寄せて短く言い放った。
相変わらず、そっけない。
長くてふわふわの髪をひとつにまとめてアップにしているところは、黒髪ストレートだった前のアヤとは違ってる。
でも、白い肌や、大きな瞳は、変わらない。
あと、おれに対するそっけない態度も。
かくいうおれも、癖のない黒髪や、あっさりした顔立ちは、前と似ている。
中身だって、もちろんそれほど変わってない、と思う。
根本的なところは。
おれの身長は、前のほうが高かったなあと思うけれど、どちらのアヤも小柄だから別に困らない。
もしアヤが倒れたりしたときに、抱きかかえて運んであげられるくらいの背があれば、それでおれは満足。
そう、おれはこんなにもアヤのことを考えているのに。
約束だってしたのに。
アヤはまだ、おれのことを好きになってはくれないみたいだ。
一緒に心中までした仲だっていうのにさ。