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必殺

 「……」

──これは、どういうことだろうか。確かに前世では牛を殴っていた。邪魔だったから、うるさかったから、角が生えていたから、あとは白黒の模様が苦手だったから、とか。

畜産科の仲間たちからは毎日辞めろと言われてきた。牛を大事にしないお前に生きる資格はないと。

格闘家の知らんやつらからも毎日辞めろと言われてきた。そのへろへろパンチで牛にダメージを与えられるお前は只者ではないと。

そのどちらにも従わなかった結果が、これか。だが──

「これなら、あの牛頭にひと泡吹かせられるのでは?」

後太郎は拳を握りしめた。前世では全てから逃げ出したが──今は、戦うべきときだ、と。

彼は来た道を、逃げ出してきたとき以上の速度で戻り始めた。


 「なんだ?さっきの人間か。探したぞ。お前を捕まえておかないと子どもたちを襲うかもしれん。面倒だが──」

「邪魔だ!」

ゴッ、と大きな音が響き渡る。4本足の牛ならまだしも、ミノタウロスの足は二本。助走の勢いがついた拳の衝撃に耐えられようはずもなく──

「ぐっ……」

ミノタウロスは頭蓋を砕かれ倒れた。その瞳にはもはや後太郎も他の何も写し出されてはいなかった。

「こ、殺したのか、俺が?」

後太郎はおずおずと倒れたミノタウロスに近寄り、軽く触る。それはぴくりとも動かず、ただの肉の塊だった。

「こんなにあっけなく死ぬとは……」

こいつからこの世界のことを聞き出せばよかった、と思ったが、もはや後の祭りだ。

「とりあえずこいつを片付けないとな。誰か来たら余計な死体が増える」

彼は近くにあった湖に、ミノタウロスの死骸を投げ込んだ。

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