13話
『2人へ。
急に実行して、ビックリしていると思います。予定より2週間も早いから。
30日の約束、破ってごめん。
私は、君たちに感謝してます。最後の最後に、最高の思い出をくれました。たぶん、意味がわからないと思います。私がキューピッドになったって話ではないから。
私は、運命が絶対であることを知っています。運命の糸は、必ずその関係を結びます。
君たちが赤になろうとした話、聞いてとても驚きました。方法は少し違ったけど、嬉しかったです。君たちを結ぶ運命の糸は緑だけど、私が君たちの間に赤い糸を結んでおくので、きっとうまくいきます。末永く、幸せに。
さて、最高の思い出の話に戻ります。
君たちがくれた、私の最高の思い出。それは緑の糸です。
今日(実行日からみたら昨日かな)、君たちと話していた時、それが見えました。
君たち2人と、私を結ぶ緑の糸。
私は、あの瞬間に、親友を2人も手に入れたんです。これが、最高の思い出です。
私から出る黒じゃない糸が見れて、とても幸せでした。
でも、だから、実行を早めることにしました。
運命の糸は絶対だから、このまま2週間も経てば、私たちはきっと親友になってしまう。
そしたら私が死んだ時に、君たちに悲しい思いをさせてしまう。今ならまだ、2回しか会ってない、ちょっとした知り合いの死で済むと思います。
本当は、君たちと親友になりたかった。一生モノの友達になりたかった。
でも。やっぱり。黒い糸は無視できないんだ、私。
ここから、君たちにお願いがあります。
お願いその1。
真凛のこと。真凛は、私が言うのもアレなんだけど、お姉ちゃんっ子です。私が死んだら、ショックを受けると思います。その真凛を、支えてあげてほしいのです。いえ、精神的に支えるのは、君たちには荷が重いと思います。
君たちには、学力的に支えてほしいのです。真凛は今、中3で、七倉高校が第1志望です。それが、私の死のせいで失敗するんじゃないかと、お姉ちゃんもう心配で。なので、真凛に勉強を教えてほしいのです。無事に合格した後も任せたいです。絶対合格させてね。
お願いその2。
2人のこと。これは私の身勝手なんですが、2人にはぜひ赤色で居続けてほしいのです。なんたって、私がキューピッドなんだし。ということで、破局は許しません。ずっとバカップルでいろ!
お願いその3。
私のこと。私の来世の話です。来世とか信じてるのって思うかもしれませんが、運命があるのに来世がないわけないでしょ。で、私の来世は、2人の子供に生まれる予定です。なので、上の破局しないでとちょっと被るけど、私を産んでください。緑色の影響で、子供はいいやとかやめてね。私は君たちの、緑と赤の織り混ざった(クリスマスカラーじゃん!)、そんな幸せな家庭に生まれたいのです。
以上、3つのお願いでした。
2人の親友 葉月朱音』
「なんだ、これ……」
「お姉ちゃんはバカだから、あんたたちが、あたしが、お姉ちゃんの死でどれだけショックを受けるか、わかってなかった」
こんな。だって。僕たちは。
「お姉ちゃんのお願いを無視するのは許さない」
お願い? なんで、こんな。ふざけんなよ。僕たちのことなんて何もわかってないくせに、何が親友だよ。
「お姉ちゃんの言葉から逃げるのは許さない」
許さない? あの断罪で、僕たちは、逃げることを許されたと。
「許さない」
「ふざけんなよ! 何、死んでんだよ!!」
「ぁぁあああああ!! うわぁあああああ!! ぁああああ!!」
僕は叫び、彼女は泣いた。
僕たちは、死ねなくなった。