扉(テンテン)
外へ出ると辺りはすっかり暗くなって、月の光が神秘的に辺りを照らしていた。
じゃ、行ってくる…なんてかっこつけてはみたものの俺は内心めちゃくちゃ緊張していた。瞭然から力をもらったとはいえ実感があまり無い。
本当に俺に龍の力が使えるのだろうかという不安もある。使えなければ大問題だ。
しかし瞭然は奴ら奴らって誰かがいる見たいに言ってたけど辺りを見回しても誰も……いや……感じる。誰か数人…確実にいる、どこかはわからないが隠れている。これが龍の力なのか?
とりあえず俺を襲ってくる気配は無い…やはり奴らの狙いは瞭然と燈なのか…。
俺は小屋に向かって深呼吸をした。これを、燃やすんだな。
瞭然は簡単に言いやがったけど、そんな簡単に燃やせるか?
俺は少し考えた。するとその感覚はいきなりだった。あぁなんだ、こんなに簡単に、なんとも言い表せることができないが、
体が昔からわかっていたかのような…まるで昔から魔法と言うものを使っていたかのように…、俺の体は…俺の両手はいとも容易く炎を操っていた。
全て燃え尽くせ。そう願いながら俺は小屋を全焼させた。
少し離れたところで、いわゆる奴らが慌てているのを感じる。龍の力ってすげーな。
そう思っていると瞭然が燈を肩に抱きながら凄い早さで逃げて行くのがわかった。
それを追ういくつかの影もある。
人間じゃなかったのか…影だ、目に見えない訳か…。
ってこんな事思ってる場合じゃなかった。
俺も全力でその場を逃げた。
龍の力もあるお陰か、山道もいとも容易く駆け抜けれた。
なんだ楽勝じゃん。そう思った時だった。
「そこの小僧、止まれ。」
突然声がした。振り替えるとそこには真っ黒く身を包んだ女性がいた。
「あなたは誰ですか?僕になんの用です?」
「お前は何か勘違いをしている。」
「勘違い?」
「龍は神ではない。」
「何を言っているんですか?」
「龍を神だと思っているのなら今すぐ考えを改めなさい。それにあなたは見たでしょう?あの少年を、あれが大昔この町を守ってきた神に見える?守り神の龍はただの昔話に過ぎない。」
「確かに神には見えなかったけれども…」
「あの龍と一緒にいるとあの少女、殺されてしまうわ。」
「それは、本気で言っているのか?」
「えぇ、助けたければ私達の味方になりなさい。あの少女を助ける為の手助けをしよう。
その代わりあなたも龍を捕まえる為に手伝う事よ。」
「なぜ龍は燈の命を狙うんだ?」
「詳しく話を聞きたいのね、良いわこっちへ来なさい。」
俺は戸惑いながらもこの女性の話を聞くことにした。