扉
「そう、交換条件。俺の願いはここから出ること。俺はここから出たい、今すぐにでも。しかし俺はここから出ることが出来ない、何故だと思う?それはこの小屋にある…、あんたらここに入る前、この小屋に変テコな文字がたくさん書かれていたの覚えているか?それが原因だ。どこかの魔術師が俺をここへ閉じ込め、2度と外へ出られない様に呪文をかけた。」
瞭然はなにか落ち着かないのかその場をうろうしながら私達に説明をしだした。
「どれくらい閉じ込められてんだ?そんな事されるって何か悪いことをしたとしか思えねぇんだが、それに呪文?が邪魔なのに俺達にどうにか出来る事なのか?こっちは魔術師がいるって事さえ初耳なんだ。」
テンテンの言う通りで私達は魔術師がいるなんて初耳だ。
そう言う魔法みたいなのはすべて龍術と教えられてきた、そもそも龍術とは違うのだろうか。
それに彼は龍の力を持っている…彼を外に出すのは危険極まりない気がする。
「まぁ待てよ、落ち着け。お前ら、龍の話は知っているか?」
「あまり詳しくは知らないけれど…たしか昔は龍がいて皆を守ってたんだろ?けれどもいつしかいなくなって、変わりに龍の石を置いてったんだ。でもあんたを見てるととても人を守ってた様には見えないけどな。」
「まぁ、それは俺は龍であって龍でないからな。しかし、やはり随分とまぁ都合のいい解釈だ。」
瞭然は少し苛立ったような、悲しいようなそんな表情をみせた。
「全てを話してもいいんだが、そんな時間も無いみたいだ。奴らに気付かれた。」
「奴らって誰だよ。」
「あんたらが自首しなかった相手だよ。どうする?俺を信じて助けるか?」
「もし信じなかったら?」
「あんたらあいつらに殺されるよ。わかってんだろ本当は、奴らがどんなに酷いか…だから自首せずに自分達で解決策を見つける為にここへ来た。違うか?」
確かに瞭然の言う通りで、その瞳は私達の全てを見透かしてる気がした。
「わかった、瞭然…君をここから出そう。俺達はどうすればいい?」
「外へ出たら既に奴らが待機している。捕まると不味いことになるぞ、燈は龍の力があるから良いとして、天…お前には俺の力をほんの少しだけ貸そう。」
「待って、私まだきちんと使える訳じゃ…」
「わかってるよ、ただその力がある状態で俺の力を貸すのはまずいんだ。使えるように努力してくれ、それじゃあさっそく…」
そう言うと瞭然は突然テンテンの首を掴んだ。
「っがっ…はっ…くるし……」
「いいか?これからお前は約1時間だけ龍の力が使える。素晴らしい力だ、使い方は自然と体がわかっている。お前がそう思えば出来るから安心しろ。そして問題は外に奴らがいる事なんだが、お前はここから出るとすぐに小屋を燃やせ。全てを一気に燃え尽くすんだ。そして俺達が逃げ出すと奴らはお前ではなく俺と燈を追ってくるだろうその隙に全力で逃げろ。いいな?」
そう言い終えるとテンテンの首から手を離した。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
「テンテン大丈夫?」
「あぁ、なんとか」
テンテンの首が黒色に光を放っている…。
「俺じゃなければここから簡単に出られる。お前の気持ちが落ち着いたら行動にうつせ。」
テンテンはじっと呼吸を整えながら扉を見つめていた。
「なぁ瞭然、俺のすることは燃やす、逃げる、だな?」
「あぁ、そうだ。」
「燈はどうなるんだ?龍術を使いこなせていないぞ。」
「俺が燈を連れて逃げる。」
「燈の事…任せていいのか?」
「安心しろ、襲ったりはしねぇよ。」
「そうか、それを聞いて少しは安心した。」
「テンテン…大丈夫…だよね?」
「そうだな、きっと大丈夫。」
そう言うとテンテンは優しく私の唇にキスをした。
「後で合流したら瞭然に変なことされてないか確認するからな。」
私はだまって頷いた。
「いや~熱い熱い、参ったな。」
瞭然の冷やかすような言葉を無視してテンテンはゆっくりと扉へ近づいた。
「それじゃ、行ってくるよ。」
そう言うとテンテンは扉の外へ出ていった。