真実を求めて
とりあえず駆け出してみたはいいものの、それぞれが散り散りになってただ闇雲に走り回って迷ってしまっては元も子もない。
この森自体が私達の存在を掻き消してくれれば良いのだけれど…。
私はデラドラルの視界から外れた隙を突いて岩陰に隠れてみるも、デラドラルは一瞬の戸惑いもなく私の居場所を見つけ出し、岩を粉砕した。
これらの事から考えればこの森が魔力を掻き乱すのはこの森自体ではなくて、デラドラルの力によるものなのだろう。
困ったな…これでは隠れる事も逃げ切る事も出来そうに無い…。
もはやこの森から出るしか方法はーーー?!!!突如風向きが変わったのを感じた。そして次の瞬間私の背中をエグろうとしたデラドラルの爪が背中をかすめた。
「ーーーーーっ…はぁ…はぁ…危なかった……。」
何とかかわす事が出来た…が、奴はどうやら私に狙いを定めたらしい…。
私を鋭く睨みつけたままのデラドラルの口からは、白く煙りが漂っていた。
何か出す気だ…。
それに気が付いたテンテン、瞭然、ジェラルドが背後からデラドラルへ攻撃を仕掛けようとしたが、その時デラドラルが全身を押し付ける様な雄叫びを上げた。
その威圧のある雄叫びは難なく3人を軽く吹き飛ばした。
そしてデラドラルは開いたままの口を私に向け光線を放った。
だめだ逃げ切れない…私は諦めて静かに目を瞑った。
「やれやれ、何故こんな事になるのかしら。」
女性の声が聞こえた時、私は目を開いた。
目の前には全身を真っ黒く覆った人が私の前に立っていて、デラドラルから発せられる光線から身を守ってくれていた。
「あな…たは…?」
この人の内に隠すように秘めた魔力をひしひしと感じて恐怖し、全身が硬直した。
デラドラルの攻撃が終わるとその人はデラドラルへ手をかざした。
「あまり騒ぎ立てたく無いのでな、特別にお前に選ばしてやろう、さあ選べ、生か死か。」
するとさっきまで威勢の良かったデラドラルが急に怯え出し何処かへと走り去って行ってしまった。
私は守ってくれたはずなのに、彼女から感じる魔力の恐怖に動けずにいた。
彼女はゆっくりと振り返り私の顔を見つめた。
その顔は白くとても人とは思え無いような冷たい目をしていた。
「あ、た、助けてくれて、ありがとうございます。」
「燈さん。私は貴方に死なれては困るのです。」
「なぜ…私の名前を…?」
「それは、私は今ゲームをしているのですから。」
そう言った彼女はとてもとても、不気味に微笑んだ。
「貴方は私を楽しませる為の駒です。だから、死なれては困るんですよ。精一杯生き延びて私を楽しませて下さいね。」
とても気味の悪い笑みを浮かべた後その女性の瞳は、まるで私の中の奥深くまで恐怖を埋め込んだ様に私の身体を硬直させた。
そして私の前からまるで霧のように姿を消していった。
「燈、大丈夫か?」
「デラドラルは逃げて行ったみたいだ、何があったんだ?」
デラドラルに吹き飛ばされた3人が戻って来た。
しかし彼女の顔が脳裏に焼き付き、私の体の震えはなかなか治ってはくれなかった。
「燈?どうしたんだ?何があったんだ?まさか、お前がデラドラルをやったのか?」
瞭然が訪ねてきたので私はゆっくりと首を横に振った。
「ある人が…助けてくれた…。」
「誰だ?」
立て続けに瞭然は質問をしてきた。
「名前も知らない人…でも…あれは…とても…恐ろしい人…。」
「助けてくれたんじゃ無いのか?」
そう…助けてくれた…でもゲームだと言っていた、一体何の?いつから私は…。
「ゲ…ゲーム…。」
「何の話だ?」
「私は…駒なの。」
「命の危機を感じて魔力が暴走でもしたか…?何にしても頭までイカれられては…。話は後で聞くぞ。」
私は頭の中で精一杯自分でさっきの出来事を整理していた。
「おい、天。俺たちは今お前に構っている暇は無い、お前の相手はひと段落着いたらしてやる。燈もこの状態だ、誰かに担がれるのが嫌ならお前が担げ。ここから移動するぞ。」
「ーーーーーーー。ああ。」
「私は…大丈夫。ちゃんと自分の足で…歩けるから。」
「あまり無理するなよ。」
「無理なんかしてないよ。」
「燈…すまない…。」
「どうしてテンテンが謝るの?テンテンは悪くないから謝らないで。」
「………。」
「しかし予想外の事が多過ぎてラタールを出てから随分と時間がかかってしまった。リリーちゃんの体力も心配だが、ここは水を諦めてリリーちゃんと合流し、メデューランを目指そう。夜になってしまっては全滅なんて事も儘ならないからね。」
そして私達はリリーの元へ移動しようとした時声がした。
「みんな!!大丈夫?さっきの凄い音は何?」
リリーだ、デラドラルの雄叫びがリリーのところまで響いたんだろう。心配して向かってきたようだ。
「なんだあんたか…デカい魔物が居ただけだ。」
「なんだって何よ、相変わらずカチンと来る言い方ね。」
「あぁ、リリーちゃん、ちょうど良かった。水が見当たらなくて、もうメデューランを目指そうと思ってたんだ。それで、リリーちゃんの体力はどう?」
「休んだから大丈夫だよ。それよりも、あかりになにかあったの?凄くやつれてる気が…」
「少し疲れているだけだよ、すぐ元に戻るよ。」
「それなら良いけど…それと、テンテンと瞭然…その様子じゃあんた達和解したんだ。良かった良かった。」
「本当、あんたの目は役に立たない節穴だな。」
「っーーー!!瞭然ってほんとムカつく事しか言えないわけ?!!」
リリーが来た事で少し和やかな雰囲気が流れたが、私達はこのまま森を抜け、メデューランを目指す事となった。




