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龍の者憑き(挿絵有り)  作者: PREY
出会い
4/50

「はぁ……はぁ…。」

何時間歩いただろうか…、流石にこの古い地図だけではたどり着けそうに無い…。

やっぱり古すぎる地図では無理なのかもしれない。

もうそろそろ日も暮れそうだし、迷わないように木に目印を付けて来たとはいえ、夜になれば素人に山は危険過ぎる。

そろそろ帰ろうか、そう思った時だった。


『……………ダ。』

微かに耳に、何かの声が聞こえた。


「テンテン何か喋った?」

「え?何も喋って無いけど、それよりもう日も暮れそうだし引き返すか?このまま暗くなると危ない。」


『……ダレダ。』

…また何かの声が聞こえた。


「やっぱり何か聞こえる。」

「え?俺は何も聞こえないぞ、大丈夫か?」


『……ナゼ……テイル。』

私には感じる。あっちの方から…。


「こっちよ…テンテン付いてきて。」

「あぁ。」

感じるままに足を運んだ。

その先には昔は湖があったであろう場所があった。

今はもう1滴の水すら無く、大きな窪みのその中央にとてもボロボロの小さな小屋があった。


「あれだ…」

私達は慎重にその小さな小屋まで向かった。

近付いて初めてわかったけど、その小屋は何やら小屋一面にびっしりと文字が書かれていた。

そして小屋の割には合わない大きく鉄で出来た重そうな扉が付いていた。

「開けるか。」

テンテンがゆっくりと扉を開けようとした。

が…とても重たいのか開けることが出来なかった。

「かってぇ、鍵でもかかってるのか?鍵がかかるところなんて見当たらねぇけど」


『お前は壱乃神ではないのか。』

また不思議な声が聞こえた。今度ははっきりと。

「いちのかみ?」

「燈?どうしたんだ急に」

やはりこの声はテンテンには聞こえていない…。

私は鉄の扉に手を当てた。

すると…ゆっくりと扉が開いた。


「まさか…開いたな…。」


中は恐ろしく真っ暗で何も見えない。ただ中は外見から見るよりもかなり広く、中と外では明かに何かが違った。

私とテンテンは無意識に手を繋ぎ慎重に一歩、中へと入った。


「ーーー!」

一歩踏み入れた瞬間、言葉にならないほどの緊張が二人の身体中を走り抜けた。

私とテンテンの喉元に硬い何かが当てられているのが感じられた。

それと共にさっきまで開いていた扉が閉まった。


『女…何故お前から僅かに壱乃神の力を感じるのだ…』

またこの声だ…。けれども私は緊張のあまりその質問に答えられないでいた。

「燈、お前が聞いていたのはこの声か?」

硬く握りしめたその先にはテンテンがいることを思いだし、ほんの少しだけ心に余裕が出来た気がした。


だんだんと目がなれてきたとき、目の前にには金色に輝く大きな目があることがわかった。

そして、私達の喉元に当てられていたのは大きな爪…そこから渦を巻いたような長い体を鋼の様な硬そうな漆黒の鱗が守っている。

間違いない…これは…龍だ……。



『何故お前は壱乃神の力を持っている、と聞いているのだ。』

再び龍の声が聞こえた。


壱乃神が何かはわからないけれど、恐らく龍の石が私の体に入ったからそれが関係あるのかもしれない…

「石を…石を拾ったの…それで…私の体の中に…」

そうやって答えるのが精一杯だった。


「お前は龍…なのか?いちのかみ…て何の事だ?」

テンテンがゆっくりと慎重に問いかけた。


『いかにも…俺は龍だ…名は零神。壱乃神について何も知らないのか?』


「あぁ…何も知らない。俺たちは龍の石を取ってもらいたくてここに来たんだ。」

『そうか…残念だ…』

テンテンがそう言うと零神と名乗る龍はゆっくりと姿を消した。



「なんだ、あんたら何も知らないんじゃん。期待して損した。」

「???」

薄暗い中から一人の少年が姿を現した。


「あなたが…零神?」

「ハハッ…まさか。あんたは俺が龍にでも見えんの?どう見たって人間でしょ?」

馬鹿にしたように笑うと彼は私を見つめた。

とても冷酷な…冷たい瞳をしている。

しかし彼が人間の姿になった龍とかじゃないのならさっきの龍は一体どこへ…


「あんたら…名前は?」

冷たい目をしたまま静かに彼は質問をした。

「俺の名前は龍池天だ、こっちは神乃燈。

……で、そっちの名前は?」


「あぁ…失礼だったな。俺の名前は瞭然(りょうぜん)と言う。

……しかしあんた…燈、だっけか?流石だ、惚れ惚れする。」

瞭然はゆっくりと私に近付いてきて、私の方へ顔を近づけそして、テンテンの前で強引に私に口づけをした。


その瞬間、テンテンは思いっきり瞭然に殴りかかった。

しかし、瞭然はテンテンに触れることなくテンテンをぶっ飛ばし、テンテンの体は壁に激突した。


「いってぇ…」

「なんだい、あんたら恋人かい?しかしまぁ俺に喧嘩売るとは凄いね。俺、龍だよ?」

「さっきは人間だって言ってたじゃねぇか…」

「ああ、言ったよ。正確には人間でもあるし、龍でもある、ってところかな。」

テンテンがゆっくりと立ち上がっているのを見て私は少しほっとした。

「瞭然、私の足に入ってしまった石の取り方を探してるの。何か知っている事があれば教えて欲しい。」


「せっかくその石に認められたのに勿体ないね。」

瞭然は少し意味あり気な笑みをみせた。


「それで、石の取り方、知っているのか?」

「あぁー…知っているよ。よーく知っている。でも……。」

「でも?」

「そうだな…交換条件としよう。」

「交換条件?」


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