檻から見たマータル
「昔…零神と言う龍が千年前に俺の中へ憑き、龍の者憑きとなったんだ。そのお陰で龍の魔法も使えるようになったし死にもしない。」
「ちょっと待ってよ、龍って…レイフェレリー様が殺したはずなんじゃ…」
「レイフェレリーが俺の中へ閉じ込めたんだよ。そして龍は2体いる事も知っているよな?
もう1体はさっき、血塗れのまま拘束されていた俺の恋人に憑けたんだよ。」
「あんたの恋人だったんだ…あの人にも龍の力が…?」
「ああ…だからあんなに酷い姿でも、龍が憑いている限り死なないだろうな。」
「一体どんな罪を犯したらそんな仕打ちをされるのよ。」
その言葉を聞いた時、瞭然の目が明らかに変わるのがわかった。
そしてリリーに飛び掛かり首元で龍の爪を具現化させていた…。
『お前…龍の逆鱗って知ってるか…?お前は今直接は触らずとも、俺の逆鱗に触れた。何も知らない小娘風情が…この呪文だらけの部屋であろうとお前の首をカッ裂く事は出来ようぞ…。』
禍々しい雰囲気が小さな檻の中を包み込んでいた。
心なしか肌寒くなって、体が自然と震えていた。
見ただけで絶望を感じるあの鋭く大きな爪も…冷たく耳に突き刺さるような声も…私は1度、体験している…あれは零神のものだ…。
「ちょっ…ちょっと瞭然、そこまでにしてなって、リリーちゃんも悪気があったわけじゃ無いんだし。」
事態を重くみたジェラルドが止めに入った。
「ーーーーーーそうだな…あれを見た後だ…少しカッとなってしまったな…。」
瞭然は少し落ち着きを取り戻したのか、リリーとは真反対の壁際に腰を下ろした。
リリーには強すぎる恐怖感だったのかその場に足の力が抜けたかのように崩れた。
「と…とりあえずこの話はひとまず置いておいて、今は此処から出る事を考えようよ。」
重たい雰囲気に耐えられず、私は思わず口を出してしまった。
「そうだな、燈ちゃんの言う通りだ、しかし普通の魔法程度じゃこの檻からは出られないし…どうするか…」
ジェラルドはさっき私の魔法を頼りにしてると言っていたけれど、この状態で私に脱出出来るほどの力があるとは思えない。
「ねぇ、あかり。あんた魔法使えるんでしょ?何で隠すのさ。何か知られると不味い事でもあるの?」
今までずっと疑っていたリリーが鋭い目で私を睨みながら聞いてきた。
この閉じ込められた微妙な緊張感の中、あれだけ精神的に強かったリリー自信にも、余裕が無くなって来ているのがわかった。
「それは…。」
「燈ちゃんは魔法が使えるよ。」
私が悩んでいるとわかったのか、すぐにジェラルドが話を割って入ってきた。
「じゃあ何故使える事を隠すのさ。」
「まだ使いこなせていないんだよ。今はまだ訓練中ってとこかな?ね、燈ちゃん?」
「え、う…うん。そうだよ。」
龍の石の事は言っていないものの嘘は付いていない。
「ふーん…。」
まだ少し納得していないようなリリーの顔だった。
「まぁいいや、あたしはまだ自分が納得するまであかりに付いていくからね。」
どおしてリリーはここまで私に付き纏うんだろう…。そんな事をほんの少しだけ思った。
「この話はまぁいいや、それよりこの檻から抜け出す手段だけど、安心してよもう手は打ってある。」
「え?でもリリーちゃんは魔法は使えない筈じゃあなかったかい?一体どうやって…」
「あたしだって出来れば早くここから出たいんだけどさ、魔法なんかここで使ったら一発でバレてすぐまた檻の中だよ。まぁ待ってなって、その内わかるよ。」
一体どういう事なのか全くわからなかったけど、ひとまずリリーを信じてその何かを待つ事にした。




