扉
「あ…あれ、龍の石だったのかも…」
私はおもむろにポケットの中を探した。
「無い…」
「無いって…お前まさか…吸収したのか?」
「まさかそんな…」
私は服を脱いで全てのポケットを裏返してみた。
「燈……。」
やはりポケットからではなく、直接私の左足が僅かに光輝いていた。
「やっぱり、体の中に入ったんじゃ…」
「どおしよう。こんなのどうやって取るの…」
「誰か詳しい人に聞いてみるか」
「龍の石を使った事がバレると私…どうなるんだろう…」
「そうだな、この事を誰か他の人に話すのはよそう。」
いつになく真剣な表情でテンテンは何か考えているようだ。
「たしか、龍の石が出来る前ってこの町には龍がいたんだよな?龍の事がわかればなにか手がかりになるのかもしれないな」
「龍がいたってただの言い伝えでしょ?本当にいたかどうかもわからない存在をどうやって探すの?」
「まずは図書館からだな、そこでこの町の歴史を調べたら何かわかるかもしれない、可能性は低いが、それしか今は方法が無いから行くしかない…」
「そうだね。」
こうして私達はここからそんなに遠くはない図書館へ行くことにした。
「で、この町の言い伝えでは龍は何でいなくなったんだっけ?」
「私もあまり詳しくは無いけれど、悪い人達が来たから逃げたんじゃなかった?」
「逃げたのか?死んだんじゃなくて?」
「んー、どうだろう。」
「わざわざ図書館まで来たんだこの町の歴史が書いてある本を片っ端から調べるか。」
それから私達はかれこれ2時間くらいだろうか、色々な本を漁った。
しかし、龍の話が書かれた本などはなくそろそろ心が折れそうになりかけた頃だった。
「やっぱり龍なんてただの昔話で本当はいなかったんじゃ…?」
私は諦めて素直に自首をしようかと決意しかけた時だった。
本棚の一番上の端の方からゆっくりと一冊の何も書かれていない薄い本が私達の目の前に止まりただ空中を漂っていた。
「これって…燈?」
「え…まさか、私が望んだから…?」
私はそっとその本を手に取った。中身を見てみると古い昔の地図だ。
「地図…?それにかなり古い。ここに何か手がかりがあるのかな。」
「今と全然違うからどこが何だか全くわからねぇな」
「でも何となく似たところはあるよ、この山とか、川とかをたよりにすると…だいたいこの辺が今私達のいるところじゃないかな?」
「燈…ここみて、この地図に書かれてる湖の中に…龍の絵がある。」
私達は確信した。ここに昔龍が住んでいたんだと。
龍でなくてもなにかこの石の手がかりになる物があるかもしれないと。
「結構山の中にあるな、その足もどうなるかわからないし早い方がいい、今から行こう。」
「やっぱりテンテンにこれ以上迷惑はかけれないし、ここは私一人で行ってくるよ」
「何言ってんだ。そんな心配は恋人の俺にするなよ!嫌って言っても無理やり付いてってやる。それに女の子が一人、山を歩くのを見過ごすほど俺は落ちぶれていない。」
「テンテン…ありがとう。」
テンテンは何とも言えない様な表情で私に微笑んだ。