魔法と龍(瞭然)
この場所は昔から魔女の住む街として有名だった。
俺は昔、この街へ1度だけ遊びに来たことがあった。
田舎暮らしだった当時の俺の目にはたくさんの魔女が暮らし、様々な魔法によって成り立つこの場所は凄くキラキラしていて、夢の国そのものにうつった。
あれから千年か…随分と長い時間が経ったが、昔のままのところも案外残っているものだな…
燈と別れたあと、俺は昔の記憶を便りにある場所を目指していた。
あった…無くなっていたらどうするかと思っていたが、よかった。
大通りから外れた小さな喫茶店へ入った。
「いらっしゃい。」
店に入ると若いキリッとした男性店員が1人カウンターでグラスを磨いていた。
「こんにちは。ここにジェイマンと言う人はいますか?」
彼は少し驚いた顔を見せ、静かに口を開いた。
「お前さんは、何者だい?」
「俺の名前は瞭然…竜山瞭然だ。そう伝えてくれればわかる筈だ。」
彼はゆっくりと俺の瞳を覗きこんだ。
「じいさんはボケてるんかと思ってたが…あの者憑きの話は本当だったのか…お前さんのその目…それが噂に聞いた龍の目かい…」
「お前と話してる時間はない、それで、ジェイマンさんはいるのか?」
「あー悪かったよ。ちっとばかしそこで待っててくれ、今連れてくる。」
そう言って男はカウンターの奥へ姿を消した。
しばらく待ってると奥から車椅子に乗った今にも死にそうな年寄りのじいさんを連れてきた。
「ジェイマンさんか?」
「ああ、この爺さんがそのジェイマンだよ。もう殆ど動く事すら出来ない。」
俺はジェイマンの近くに寄りゆっくりと話を始めた。
「ジェイマンさん…覚えてますか?瞭然です。」
「あぁ…りょ…ぜん…………おそ……な……。」
ジェイマンはゆっくりととても聞き取り難い声で話始めた。
「あれ…ら…千年……た…か…?」
「すまない…外に出るまでに千年以上もかかってしまった。桜水の居場所がどこかわからないんだ。教えて欲しい。」
「おう…すい…は……火の……村……。」
「火の村…なんだな?」
ジェイマンはゆっくりと頷いた。
「もういいだろ。爺さんは限界だ。」
「ああ、すまない。助かった。」
ジェイマンは疲れたのか眠ってしまったようだった。
「で、お前さんの目的はなんなんだ?」
「1人助けたい人がいるんだ」
「本当にそれだけか?」
「どういう意味だ?」
「その桜水って人もあんたと同じ者憑きなんだろ…?」
「ああ。」
「それでその桜水もあんたと同じように閉じ込められてると」
「さっきからあんた、なんなんだ?何が言いたい?」
「お前さん龍ならレイフェレリーって…知ってるよな。」
「当たり前だろ。」
「そう、お前さん達が恨んでも恨みきれない女だ。その女…レイフェレリーはまだ生きているぞ。……お前さんにはこの意味がわかるよな?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は全身が奮い立つような。文字通り、はらわたが煮えくり返るような、そんな爆発しそうな怒りを押さえるので精一杯だった。




