魔法と龍
「ふぅ…こんなもんかな?」
二時間くらいは経っただろうか、私はやっと飾り付けを終わらした。
それにしても、本当に広い舞台だ。気が付かなかったが、ここはこの街の中心にあり、なだらかに中心へ向かって高くなっていて、この街全体を360度見渡す事が出来た。
「おっ、やるじゃん、センスあるね。」
リリーがどこからかやって来た。
「はいこれ、休憩しなよ。」
「ありがとう。」
リリーから飲み物を手渡されたので有り難く頂いた。
「もう少しで演劇が始まるからさ、良かったらここで見てかない?舞台裏は人が来ないし、穴場だよ。」
「うん、見てみたい。」
「あたしも出るんだよね。主役のレイフェレリー様の役で。」
「レイフェレリー?」
「あんた本当に何も知らないの?」
リリーはとても不思議そうな顔で私の顔をまじまじと見つめた。
「うん、この街にきたの今日が初めてだから。」
「レイフェレリー様はこの国の王女だよ。北も南も東も西も、全部のね。それで今日はレイフェレリー様の千…何回だっけな?…とりあえず千回目以上の誕生日なわけ、だからみんな祭りで盛り上がってるのよ。」
全ての街の王女…?それを知らないのはさすがにまずい様な気がした…。
「そうなんだ…ど、どおりで、こんなに盛り上がってるんだね。」
「まぁ、この街が盛り上がってるのはいつもの事なんだけどさ、この演劇が終わってからは更にみんな盛り上がるよ。これがなきゃ始まらないって言うか、」
リリーからは私の常識の無さを気付かないようにしてくれた様な、そんな気がした。
「まぁ、見ててよ…色々衝撃的かも知れないけどさ。そろそろ始まるし、行ってくるわ。」
そう言うとリリーはそそくさとまたどこかへ行ってしまった。
リリーが姿を消してから30分くらいが経った頃、昼間なのに辺りは真っ暗になり、突然大きな花火が打ち上がり、盛大な音楽が流れた。
そして演劇が始まった…。
そこにはとても悪い黒と白の龍がいて、人々を苦しめている。私の知らない龍の話だった…。
そして…2頭の龍は、リリー演じる主役の魔女レイフェレリーによって殺された。そこで、観客のボルテージは最高潮になり、大きく盛り上がった。
レイフェレリーは王女になり、世界を統一させた。
そんな物語を、私は見ていた。
演劇が終わるとさっきまで騒がしかった街からは急に物音一つしなくなり、異様な静けさに包まれた。
私はそれに戸惑っていると気がつけば、役者に観客そこにいた全員…、いや街全体の人が跪いていた。
そして、空から舞い降りるようにゆっくりと、舞台の上には純白のドレスを着たいかにも王女らしい王女の格好をした女性現れた。
私はとっさに舞台裏から隠れるようにして見ていた。
そして、王女は何やら挨拶を始めた。
「皆さん。ごきげんよう。今日はわたくしの誕生の日を祝ってくれてどうもありがとう。
魔法と言うのはとても素晴らしいものです。日々努力を怠らず訓練をし、そしてあの恐ろしい過去を繰り返さぬよう…再び龍が復活しても、また戦えるよう鍛えましょう。」
そう言うと王女はゆっくりと文字通りその場から姿を消した。まるで、霧のように。
王女が消えた後、人々は再び歓声をあげ、さっきまでの雰囲気をとり戻した。
私にはそれは非常に異常な光景に見えた。




