パートナーが決まりません。
「はぁ…。そうなのですか。理由をお聞かせ願えますか?」
後ろで今にも飛びかかりそうな気配のルナを抑えながら聞いた。
「俺の妹が天使の降臨に出るからだ。婚約者がいればいいんだがな、まだ決めていない。」
「それで妹さんのパートナーになると……。了解しましたわ。」
「あぁ、そうか。ありがとう。話はこれだけなのでこれで失礼する。」
アベルは少し微笑みながら部屋を出ていった。
「ユリア様!?何了解しちゃってるんですか!パートナーはどうするんです!」
鼻息を少し荒くしたルナを見たユリアはため息をつきながら言った。
「はぁ…。きっとどうにかなるでしょ…。」
今回はユリアであっても、パートナーを見つけられるかどうか少し不安なのであった。ユリアが不安になるのも無理はない。婚約者がいる身でパートナーがいない者はこれまで誰一人としていなかったのだ。しかも、ユリアの周りにパートナーになってくれそうな年頃の男子がいないのだ。これでは見つけようがない。パートナーになるのは婚約者、親、兄妹がほとんどだが、ユリアの場合、婚約者は妹とパートナーに、親は王だ、王女であることがバレてしまう、兄妹もいない、どうしようもないのだ。
「ルナ…。どうしよう…。どうにかなるとは言ったけど周りに男の子がいない…。」
「だから言わんこっちゃないでしょう!でもユリア様。一人お忘れではありませんか?」
「一人…忘れ…?」
ルナに言われて考えたがユリアの頭の中には全く出てこなかった。これでもユリアは学年首位の頭脳をしているのだが。
「ユリア様!オスカー様ですよ!オスカー・エイベル様!」
「あ!オスカーね!」
オスカー・エイベルとはエイベル公爵子息、エイベル次期公爵である。次期公爵という身分をもち、天上の貴公子と呼ばれるほど美しい彼には未だに婚約者がいない。公爵家ということもあり、王女ユリアの婚約者候補だったが、婚約者に選ばれたのはアベルだった。しかし、ユリアとは気まずさもなく、仲が良いほうだった。
「オスカーなら、姉妹もいないし婚約者もいない。頼みやすいわ!」
ユリアは、早速頼みに行きましょう!と少し早足で部屋を出ていった。