王女には婚約者がいます。
さて、突然だが王女であるユリアには婚約者がいる。同じ学園に通っているルキアス公爵子息、アベル・ルキアス次期公爵である。ちなみにユリアは15歳、アベルは16歳の1歳違いである。この国では女子は16歳、男子は17歳から結婚することができるため、来年には夫婦になっているだろう。ユリアが王女であることはルキアス公爵は知っているが、アベルは知らない。この国では女子は王になることができない。そしてユリアには兄弟がいないため、王女ユリアの夫になる者がユリアの息子が即位するまでの中継ぎの王となる。これは国中の者がしっていることである。これが、ユリアが王女ということをアベルが知らない理由でもあるのだ。もし王女だと知り自分は次期王だ、などと調子に乗り厄介事を起こされても面倒なのだ。アベルは真面目であるため知っても厄介事は起こさないだろう。多分。まぁルキアス公爵からどうしても…!とお願いされて決まった婚約だ。問題を起こされても困るのだ。
「ユリア様。アベル様がいらっしゃいました。」
学園の侯爵以上の者に与えられる個人の部屋で紅茶を飲んでいたユリアは、ルナの言葉を聞いてその手を止めた。それくらい驚いたのだ。ユリアとアベルの仲は悪いわけではなくお互いを訪ねることはあるが、部屋に来るほど親密というわけでもないのだ。特にアベルがユリアの部屋を訪れることはなかった。
「何かあったのかしら?とりあえずお通しして。」
「かしこまりました。」
少しすると、アベルがユリアのもとへ来た。
「アベル様。わたくしに何かご用でしょうか?」
学園内でのユリアは公爵令嬢ということになっているため、少し控えめに聞いてみる。
「あぁ、実はな、3ヶ月後に行われる王家主催のパーティーについて話があるんだ。」
アベルの話を聞いてもうそんな時期か、とユリアは思った。
王家主催のパーティーとはその名の通り王と王妃が主催するパーティーである。毎年行っているためリーロッサ学園の恒例になっている。このパーティーでは男子、女子がそれぞれパートナーと共に学園のホールにある大階段をおりてくるのが伝統であり、天使の降臨と呼ばれている。婚約者であったり親であったり、ときには兄妹などがパートナーとなる。
「天使の降臨、ユリアをパートナーにできない。」