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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

紅い月と吸血鬼

作者: 悪死姫
掲載日:2016/10/06

乱れる事を知らぬ時計の秒針。

一分一秒も逃さないその秒針はとても切ないもの。

時が流れれば人は死ぬ。

生れては死ぬの繰り返し。

なのに私は人の死には敏感な方だった。

数え切れないほど人を殺して来たのに不思議に、あの人の死だけは悲しくて苦しかったのよ。

闇に溶け込む美しい黒髪の人間。

月の光に反射する美しい銀髪の吸血鬼。

死ねない身体だけどこれでお終いにするわ。


あの人の出会いはいつだっただろうか。

人を寄せ付けない険しい山奥にあるお城。

何千にも受け継がれて来た吸血城。

私は吸血鬼。

両親は人間と言う不思議な繋がり。

紅い月の夜、私は殺した。

夜明けのあの眩さは異常なほど眩しい。

季節は巡る。

永久に捧げる私のすべてを。


「お母様!お父様!」

お母様に手を繋がれてきたのはお城の地下牢。

嫌な感が頭をよぎった。

両親は酷く私を軽蔑けいべつしている。

何故なら両親にはない牙が生える時があるから。

それは覚醒と言い飢えに苦しむとでて来る厄介な物。

両親は私を地下牢に閉じ込めた。

暗闇が広がる世界に。

『もう、貴方は要らないわ。ミッシェル』

『吸血鬼なんぞを生ませた覚えなないけどな』

もう会えない。

あぁ、日が当たらない山奥にそして、地下牢に。

私の人生は暗闇だらけ。

「行かないで…お母様、お父様」

この日が運命を変えてしまうことなどを両親は知らない。

季節が何回も流れて私も成長をする。

食事はメイドが運んで来てくれているけど美味しくない。

吸血鬼だから?

私が地下牢に閉じ込められて3年は経とうとしていた。


そして雨上がりの夜、空を見上げたら星が光っている。

吸い込まれるように小さい窓から眺めていると紅い月が雲から現れた。

全身に血が巡り全てが憎く感じる。

「紅い月…楽しい時間が始まるわ」

すると、異様なほどに血が欲しくて地下牢のドアを壊して地上へ行く。

お城の長い廊下を歩くとメイドを見つけた。

『お嬢様?どうして…ウグッ…』

口から大量に血を吐いて死ぬ。

私がお腹を切り刻んだから。

返り血を浴びてその血を口に運ぶ。

「血が欲しい…」

きっと、厨房に人はいるわよね。

大広間とかにも。

最初に大広間に行くと晩餐の途中だったらしい。

『ミッシェル!?地下牢には鍵か掛かっているのに…それにその血は』

『牙!?早く逃げるぞ』

逃がすもんですか。

「フフッ」

両親を殺してしまった。

悲しくはないけど。

メイドも全員殺してしまった。

私の欲望に負けてしまい。

我に返ると血まみれのお城。

無残にも死んで行ったお城の人達。

「…全部、私が?」

お城が血まみれで驚いたけど。

でも悲しくはないから。

時間をかけてお城を掃除した。


お城に人が消えてから一カ月は経とうとしている。

死体はすべて地下牢に入れといた。

もう使わないから。

日が当たらない暗い地下牢。

そして雷鳴が鳴り響く深夜の出来事。

お城のドアを叩く音がして目を覚ます。

恐る恐るドア越しに尋ねる。

「誰…?」

『遅くにすいません…。しばらくの間泊めてください』

久しぶりに見る人間。

憎たらしくて殺意が湧いて来る。

「雨が酷い…入って」

お城の中に入れて殺せばいい。

なのに殺せなかった。

「…部屋開いてるけど…この部屋を使って」

お母様とお父様の部屋まで案内をする。

この部屋なら大丈夫。

『ありがとうございます』

部屋に入って行く姿を見つめると懐かしさを感じる。

人間って全てが同じだから。


雨が上がり朝日が昇って綺麗。

雨粒が葉っぱから落ちる光景は宝石見たいに輝いていた。

まるで涙みたいに。

あの人の為に余ってるシーツで服を作った。

タオルも用意してバスルームに置く。

「…これでいいよね」

支度を終えて部屋から出て来るのを待つ。

『…あ、昨晩はありがとうございました』

「服がボロボロ…バスルームに行ってシャワーを浴びたら着替えて。新しい服置いてあるから」

『でも』

「いいの」

しぶしぶとバスルームに向かって行く姿は鮮明。

何分かが経ち大広間へと戻って来た。

服は少しゆとりがあるくらい。

「名前聞いてなかった…教えて」

『アレン…此処に吸血城があると聞いて探しに来たんだが…大雨で道に迷って』

吸血城は此処だ。

私は人間に殺されちゃうのかな。

でも、私が先に殺すから。

「私はミッシェル…此処のお城の主よ」

『ミッシェル…美しい名前だし髪の毛の色が銀髪だなんて珍しい』

髪の毛に触れて囁いた。

何よ…この気持ちは。

身体が熱い。

「ずっと…此処に居て!」

無意識に大声で叫んだ。

それと同時に私は吸血鬼へと姿を変えて行く。

『っ!?お前は吸血鬼…俺を殺す為に泊めたのか?』

突然の姿に動揺を隠しきれていない。

この気持ちはなんなのよ!

「違う!私は…一人ぼっちが嫌いなの…寂しいの」

これが私の本音かも知れない。

久しぶりの人間だから感情が高ぶっているのかも。

『一人か…俺と同じだな。ミッシェル』

悲しい顔をして微笑んでいる姿に胸が締め付けられる。

『いいよ、じゃあ残ってやる』

「うん!」

二人の奇妙な生活が始まった。


二人の生活は明るいものではないけど楽しかった。

吸血鬼の姿でした生活ができなくなった私の身体を心配してくれるし。

血は村の人を吸っている。

「アレン…私を殺したいなら殺せばいいよ」

私は囁く。

『殺す訳ないだろ?俺は今、幸せだ』

アレンと出会い16年の月日が流れた。

アレンは日に日に弱っている風に見える。

人は年を取ると死ぬ。

でも、アレンは違う。

「アレン…日に日に弱っているし…食事を食べてくれない」

『…大丈夫だよ。気にすんなミッシェル』

時計の秒針が暗い部屋に響く。

このままじゃアレンが死んじゃう。

「アレンしっかりして」


季節は冬になり雪は舞い落ちる。

アレンの病代は悪化する一方。

人間とまともに生活するのは初めて。

お医者様を呼ぶお金はあるけど、私は吸血鬼。

こんな姿じゃ村にも行けない。

夜の時間だけ血を吸いに行くだけだから。

『ミッシェル…』

「どうしたの?」

『美しいよ…雪の色と同じ髪の毛の色が」

「アレンも美しいよ。暗闇の中に溶け込む黒がね」

些細な会話でも嬉しかった。

冬が過ぎると春が来る。

アレンは春の暮れに病気で死んだ。

「アレン?アレンっ!目を開けてよ」

アレンは死んでいた。

嫌だ。嫌だよ。

私を置いて行かないでよ。

「うっ…うわあああああああああああああああああああああああ!」

私は狂ったように泣き叫んだ。

初めて知ったこの気持ちは恋と言う事を。

アレンの死体を抱きかかえて私は泣いた。

人間の為に涙を流したのは初めてだった。

アレンが居ないと私の人生は暗くなる。

厨房に入り肉切り包丁を持ちだす。

アレンの死体を傍に置いて私は決意を固める。

「アレン…私は貴方の傍に居ますわ」

勢いよく心臓に突き刺した。

鮮血が飛び散って私は倒れる。

吸血鬼は心臓を刺さないと死ねないから。

何度も何度も突き刺すと背中越しに包丁が貫通したのが分かった。

「うっ…アレン…」

アレンの死体を抱きしめて私も死んだ。

吸血城は滅びてしまう事を確信して。

貴方に捧げる私のすべてを。

この世のすべてに。

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