変わった?
【夫のターン】
自転車通勤を初めて数カ月。すっかり身体も慣れて、毎日が心地いい感じ。たまに、雨の時は死にそうになるけど基本的にそれ以外は気持ちよく通勤ができている。
そして、なにより、体重が少し減った。(3キロ)
「……修ちゃん、なんか変わった?」
それは、夕食の時だった。妻が俺の身体をマジマジと見ながらそう尋ねる。
「ふっふっふっ……とうとう気づいてしまったかね」
この引き締まった身体に。
「……服がダサくなった!」
!?
「な、なってねぇよ!」
断じて普段着だよ。
「そっか、最初からか」
「き、貴様……」
「髪をきった!」
「今日平日だぞ!」
そんな暇ねえよ。
「……だよね、いつもそのダサさだよね」
「き、貴様……」
お前の髪の毛引っ張ってグイングインしてやろうか。
「髭剃った!」
「毎日剃っとるわ!」
「爪きった!」
「どこ見てるんだ! めっちゃのびとるがな!」
「はい、爪きり!」
「くっ……ありがと!」
パチッ……パチッ……
な、なんて察しの悪い妻なんだ……いや、ワザとやってる気もするが、これは本気で俺に関心がない可能性が高い。
「ねー、切り終わった?」
「ああ、終わったよ。で?」
「……なんだっけ?」
「き、貴様……」
お前の頬っぺた真っ赤になるぐらいビヨンビヨンしてやろうか。
「あっ、変わったところだったっけ? うーん……」
ジロジロ
マジマジ
「……どうだ?」
「髪切った!」
「切ってないっつってるだろ!」
「ヨガ始めた!」
「始めてねえよ!」
「カバディ始めた!」
「それは、お前だ!」
そして3日でやめたなお前は。
「ムエタイ――「やるかぁ!」
そしてわかるかぁ!
はぁ……はぁ……
「修ちゃん、ごめん全然わかんない」
「全然わかんないのは、お前の脳内回路だ」
「あっ……」
「わ、わかったか?」
「今いるのはそっくりさん!」
「シメルぞてめぇ!」
「テレビカメラどっかにない?」
「どっきり番組じゃねぇよ!」
というか夫のそっくりさんてどんだけこった番組だ!
「うーむ……」
「……」
そんなに考え込むまでに、もっと早く出るだろ普通。一番目か二番目に出て来そうな選択肢じゃないか。
「実はカツラだった!」
「だとしたら黙っとけ!」
そこは妻として。
「実は目が悪い!」
「昨日今日の話じゃねぇよ!」
というか、ずっと目が悪いんだよ。
「機嫌が悪い!」
「あー、今めちゃくちゃ悪くなってるよ!」
全部お前の察しの悪さでな。
はぁ……はぁ……
「ぜ、全然わからないデス」
「というか、変わったというより、全然違う方向言ってるぞ」
・・・
「あっ! 体形!」
「そ、そうだよ! お前やっと気づいて――「太った!」
・・・
とりあえず、グーリグリの刑に処した。