入学準備
【妻のターン】
午後2時。つかの間の休息で、主婦の方々とアフタヌーンティーへと洒落こむ。主婦とは本当にストレスのたまる仕事なのだ(確信)。
そして、夫の『ツンツン動画』で、今日も私はヒーローだ。
「――ああ、理佳っちのところは楽しそうでいいわねぇ。私の夫なんて本当につまんないんだから。こんな動画とらせてくれないよ普通」
いえ、強めに殴られました。
「でもさぁ……さすがに、こんなにいたずらばっかりされたら、いくら優しい夫でも浮気しない?」
うわっ、ちょっと澤田さん。なんでそんなに荒んだ表情をしてるんですか。
「大丈夫ですって! 夫は私なしでは生きていけないですもん」
なぜか爆笑するママ友たち。ちょっと、失礼じゃない。
「でもそんなに波乱万丈だとねぇ。浮気とか浮気とか浮気とか」
……澤田さん。なにか、あったんですか。
「そんなことより、このバナナケーキ美味しいですよ。あーん」
「ありがとー! 理佳っちはいつも分けてくれるから好きー」
そう言ってボス猿ママの小林さんの口に食物を献上する。密かにボス猿であるバナナ製品を食べさせるのは、私の趣味であり使命だと思っている。そのせいで、私は、バナナ好きだと思われているが、全てはボス猿である小林さんのため。
「あーあ、斎藤工と高橋一生が私を取り合って、めちゃめちゃにしてくれないかなー」
……澤田さんの闇は深い。
「ところで、そろそろ小学校入学の準備しないとねー」
小林さんが、そう言いながらチョコレートケーキを頬張る。当然ながら、私には、くれない。
「お金かかるのよねー」「みんな、ランドセル買った?」「買ったわよー、めちゃくちゃ高かったけど」「でもまあ、子どものためだもんねー」「他にも服とか筆箱とか鉛筆とか」
口々に愚痴を言い合う主婦たち。
「フフフのフー……私、全部貰い物です!」
・・・
あ、あれ……賞賛の声がない。
「ええっ、理佳っち全部貰い物なの?」「他のことはケチっていいけど子どもの事よ?」「ってことはランドセルもよね、信じられなーい」「そんなに節約してなにがしたいの?」「夫もよく許したわよねー、信じられないわ」
めちゃめちゃ批判されてる――――――!?
「だ、だってタダですよ? この世にタダより素晴らしいモノがあるんですか?」
「やっぱ感覚違うわよね理佳っちは」「ねー、お嬢様育ちなのに」「タダタダって、まあタダはいいんだけど、ちょっとねぇ」「まあ、理佳っちはしょうがないんじゃない?」「まあ、理佳っちだもんねぇ」
「……」
どうも、私は、一般とは違うようだった。




