キラキラネーム【男の子編2】
【夫のターン】
午前5時半。昨日の深夜までボロボロになるまで働き、即バタンキューでベッドに入りボロ雑巾のように眠っていたところに、妻はガンガンと俺の肩を揺らす。
この女はなにか俺に恨みがあるのだろうか……
「ねぇ、修ちゃん。どんな名前がいいと思う? ねえねえねえ」
「……明日じゃダメなのか?」
なにも、今日じゃなくたって。そもそも、あと一時間半で会社に行かないといけないのに。なんなら、明日なら休みなのでお前の世迷言にも付き合ってやれるのだが。
「ダメ」
……今更だけど、結婚しなきゃよかった。夫婦生活というのは、そんな想いの繰り返しであるといっても過言ではない。この女は、それが一年間に300日ほどあるだけだ。その分、結婚して本当によかったという日が一週間に一回くらいあるから、始末に悪いのだが。
「じゃあ、真――「あっ、修ちゃんの意見は通らないから」
・・・
「コノヤロー――――――――!」
「痛痛痛痛痛痛痛痛痛っ! グ、グーリグリの刑は胎児に影響が―――!」
「出ない程度に、いじめてやる。この野郎この野郎」
「ぐわああああああっ」
はぁ……はぁ……
「懲りたかこの野郎」
「う、うん。あんまり暴れるとよくないしね」
まだ、ヤリ足りないが、その意見にはひどく同意だ。
「『雑草』という名前以外に、他に候補があるのか」
「うーん……猪木」
「プロレスラーにでもする気か!?」
「燃える闘魂だよ!」
「個性と想いが強すぎる! 次!」
「ちなみに闘魂は?」
「なんでそんなにアントニオ猪木崇拝してるんだバカ!」
「雑草魂だよ!」
「もはや言っていることがわからん!」
「じゃあ、三男は?」
「長男なのに!?」
敢えて、次男を飛ばす意味すらも分からん!
「だって……人間だもの」
「ひらがなのやつか!? 荷が重すぎないかな!?」
なんか人間的ないろいろを背負わせ過ぎてはいないかな?
「人って 互い互いを支えあって いるんだなぁ」
「みつお風に意味わからんこと言うな! 次!」
「大将は?」
「さっきから変わった名前だけど……どういう意味を込めてだ?」
「おにぎりを好きになって欲しい!」
「絶対に裸の大将だろ!? アホか次!」
「寅――「さんな! 古風なんだよさっきから! お前がこの子に込めたい想いがさっきからよくわかんないんだよ!」」
「男らしい子に育って欲しい!」
「お前の『男らしい像』はアントニオ猪木か!? みつおか!? 寅さんか!? 裸の大将か!?」
「うん」
「じゃねぇんだよ変えろバカ!」
はぁ……はぁ……
「全然決まらないね」
「お前が決める気がないからな」
「エへ♡」
「とりあえず寝かせろバカ!」
名前論争は続く。




