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くだもの


「さっ、修ちゃん。あーん❤」


 そう言いながら夫の口元にリンゴを持っていく。


「……」


 パシッ


 夫が私の手を払いのけてリンゴが地面に転がる。


「ひ、酷い……」


「酷いじゃねーよ! 貴様の一本背負いで入院してんだよこっちは!」


 そ、それについては申し訳ない。

 実はあの後、ピクリとも動かなかったので救急車を呼んだ。

 救急隊員に原因を尋ねられ、階段から落ちたことにしたのは秘密だ。


「だから、何回も謝ってるでしょ。そんなに怒ってると可愛くないゾっ」


 そう言いながら修ちゃんの傍で可愛い子ぶる――うわっ、殺意のこもった目つきで睨まれた。


「だいたい……なんでリンゴきらないんだよ! 普通一口サイズだろ!」


「丸かじりが一番おいしんだよ? 妻の愛情がこもってるからこその――」


「嘘つけ! おちょくってんだろう俺の事」


 そう言ってかけ布団を被って寝転ぶ夫。

 まあ……おちょくってるんだけど……ちょっとやりすぎたか。


 そんな時、外から看護師さんが入ってきた。

 20代前半だろうか……可愛らしい顔立ちの子だ。


「橋場さん、ご飯持ってきましたから。相変わらず夫婦仲いいですねぇ」


 そう言いながら、配膳を行う看護師さん。

 バツが悪そうに、かけ布団をとって応対する修ちゃん。


「仲良くなんてないですよ。こいつ、アホなんです」


 ムムッ……何ちょっと格好つけてんのよ。


「あはは……またまたぁ」


 看護師さんは笑顔で退出した。


「修ちゃん……浮気したら……」


 そう言いながら果物の入ったバスケットをまさぐる。


「どうしよっかなぁ。妻は何もさせてくんないし――」


 スパッ


「はい、バナナ。半分こ」


 満面の笑みを浮かべるあたし。


「……怖すぎるんだよお前は!」


 ああ、神様。こんな可愛い夫をくださってありがとうございます。


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