母
【妻のターン】
日曜日。午前9時にみんなでテレビを見ていると、インターホンが何度も何度も鳴らされる。
「誰だろう?」
そう言いながらモニターを見ると……
「お義母さん!? ど、どうしたんですか?」
そこに映ってたのは、修ちゃんの生みの親である和子さん。そして、現在絶賛私の姑である。
「へへ……家出してきちゃった」
てへっ、と言った感じで照れ笑いする。
そんな表情を隣で夫が見つめる。
「どうせ、親父と喧嘩してきたんだろう?」
「離婚する」
!?
「阿呆か、離婚とかそう簡単に口走るなよ!」
「とにかく入れなさいよこのバカ息子」
「ば……ババア」
そんな温かい母息子のやり取りを横目に、戸惑いを隠せない私。お義父さんは、非常に優しい人で、なにをやってもニコニコしてくれている。そんなお義母さんとお義父さんが離婚……ちょっと、自分たちの話以上に笑えない話だ。
「あらー、凛ちゃーん」
「ばあばー!」
家に入って来るや否や、娘と熱烈なハグ。傍から見れば落ち込んでいるようには見えない。
「おい……なにがあったんだよ?」
修ちゃんもイライラを隠さずに尋ねる。
「……」
お義母さんはなにも語らない。
「黙ってちゃわからないだろう?」
「……」
やっぱり何も言わない。
「修ちゃん。とにかく、いったん落ち着いてもらおうよ。お義母さん、せっかく来たんだからゆっくりしてくださいね」
こんな時だ。ジョークは抜きにして、精一杯もてなしをさせてもらおう。
「……ありがとうね、里佳さん」
その言葉には、いつものお義母さんらしい元気が足りない。やっぱり、なにか、あったのだろうか。
・・・
2時間が経過。存分に、娘と遊びつくした後、いつもより笑いながらリビングでテレビを見る。
「おい……いい加減話してくれてもいいんじゃないか?」
修ちゃんが尋ねる。今度は感情を抑えている。
「……あんたみたいに単純じゃないのよ」
「ば、ババア」
「そんなことより、あんた! 里佳さんに迷惑かけてない? 里佳さん、このバカで愚鈍な息子は、あなたに迷惑をかけていないかしら?」
素早く話を転換するお義母さん。
「は、はい。まあ、《《大丈夫です》》」
「ば、バカ妻がぁ」
素早く修ちゃんのツッコミが入る。
「1ミリでも迷惑かけたら、私に言ってね! この息子を箒でボコボコにする……そんなことぐらいしか……私にはできないから」
お、お義母さん……凄く物騒なことを口走っています。
「あのなぁ! いい加減になにがあったか教えてくれよ!」
「……」
無視。こんな時に、修ちゃんのふてくされた様子と重ねてしまうのだった。
2月15日に発売しました!
イラストは氷川へきる先生です!
ぜひぜひよんでみてください!




