京都旅行(4)
【夫のターン】
京都霊山護國神社を出た後、蓮華王院三十三間堂に到着。ここには、実に千体の仏像、そして千手観音坐像が祀られているとのこと。
中を歩くと、壮大な光景が周りに広がる。
凜を抱っこしながら、並べられた仏像を眺めて歩く。
「凄いなー」
「うん」
「凄いねー」
妻も同意しながら、放心状態で歩いていく。やはり、国宝はどんなものでも見る者の心を奪われるインパクトを与えるようだ。
・・・
「……」
「……」
「……」
しばらく、沈黙が続く。
「里佳……どうした?」
「修ちゃんこそ」
二人とも遠回しに思っていることを否定する。そんなはずはない。そんなはずはないのだ。
「暇だねー」
!?
「り、凛ちゃん! なんてことを」
「そ……そうよ。これは、国宝! 国宝なんだから!」
「だって、暇なんだもん」
は、はわわわっ……お坊さんが近くにいないかを思わず確認する。
「凛ちゃん! 黙りなさい。仏像がいっぱいいて凄いでしょうが!?」
「うん。凄いよ! 凄いけど、暇なんだもん!」
恐ろしい……神仏恐れない我が娘……親の顔が見たい。
「ほら、最後の方に千手観音いるから! それまで我慢なさい」
妻が早歩きで凜を抱きかかえて、歩く。
意外にも、里佳は神仏を極端に恐れる。日々、後ろめたいことばかりをしているからだろうか。
千体の仏像たちは、心なしか悲しそうだ。
「ごめんなさいごめんなさい……」
妻も罪悪感からか、ぶつぶつと懺悔をつぶやく。
「罰を与えるなら、どうか修ちゃんに――」
「おい」
娘のためだったら喜んで受け入れるけども。
お前の罰はお前で受けろよ。
・・・
千手観音坐像に到着。壮大にそびえたつ仏像に、無数の手が幾重にも表現をしている。まさしく、国宝と呼ぶにふさわしい佇まい。まるで、『俺が千手観音だ』と言わんばかりの荘厳さ。『見よ! この手を。俺はいろいろできるんだぜ~。羨ましいだろ~』とも。
「凄いなー」
「うん」
「凄いねー」
妻も同意しながら、放心状態で歩いていく。
少し嫌な予感がしながらも、3人で千手観音を眺める。
・・・
「……」
「……」
「……」
嫌な予感が、する。そして、しばらく、沈黙が続く。
「里佳……どうした?」
「修ちゃんこそ」
二人とも遠回しに思っていることを否定する。そんなはずはない。そんなはずはないのだ。
「暇だね」
ひ、ひいいいいいいっ。
以下省略の展開だった。