トレンディ
【夫のターン】
家族で近所のスーパーへ行って、晩ごはんの材料を買いに行った。
隣で歩いていると、チラチラと妻に送られる視線が目につく。我が妻ながら外面が凄くいいので、こんな時は少しだけ鼻が高くなる。妻は一言で言えば、綺麗だ。二言目以降は、いろいろモノ申したいことが出てくるのだが。
「ねぇ、修ちゃん。ケチャップ持ってきて。買い忘れちゃった」
「へーい」
そう返事してさっきあった調味料売り場へ戻って行く時、
「あー! 里佳じゃん、ひっさしぶりー」
大きな声が響き渡って振り向くと、知り合いらしき人が妻に近づいていた。どっかで見たことあるような……ないような……
「ひっさしぶり、留美! 元気だったぁ」
妻も負けじと大きな声で応じる。
「大学以来じゃーん。元気だった?」
「元気元気! 留美は?」
「えっへへへ! じゃーん」
誇らしげに彼女は指の指輪を掲げた。
「うっそ結婚したんだあんた! 絶対しないーとかって言ってオーストラリアでワーホリ逃避行かましてたのに。それはそれはおめでとうござーい」
察するに大学時代の友達だろうか。妻とは同じ大学なので、俺も知っててもおかしくないがどうにも思い出せない。
「まぁ……いろいろあってね……ってか、あんたも結婚してこーんな可愛い子どももいるのね。お互い年取ったわねぇー」
でしょう、留美さん。ウチの子は世界一可愛いです――と、心の中でつぶやく。
「でも、理佳こそ結婚なんて柄じゃなかったのに……って、あれトレンディじゃない? ねぇ、ほら里佳! アレアレっ」
どうでもいいが声でかいなあいつら。結構離れた場所なのに会話が全部聞こえてくる。やはり、夫として挨拶した方がいいのだろうか。
「ああ、アレはウチの夫だよー」
・・・
え゛っ! 俺、トレンディって言うあだ名だったの!?




