前編
誤字脱字報告してくれるとうれしいです。
家の近くにあるアパート。
そこに私の友達が住んでいる。
今日も私はそのアパートへ向かう。
「ときはっ!」
ドアを二回たたき声をあげる。
ドアを開けるのは鴇羽のお母さん。
「いらっしゃい、奥にいるからどうぞはいって。」
笑顔がやさしい鴇羽のお母さん。
少し羨ましかった。
「おじゃまします!」
靴を脱いで鴇羽の部屋へ向かう。
「ときは!大丈夫?」
「うん。来てくれてありがとう、菖蒲ちゃん。」
おでこにタオルをのせて、布団で寝ている鴇羽は、少ししんどそう。
風邪をひいて学校を休んだ鴇羽を訪ねるのも、もう何回目かな。
「これ、今日の給食のプリン!こっそり持って帰ってきちゃった。」
「! ありがとう…!」
プリンを見て笑顔になる鴇羽を見て少し安心する。
「無理しないでね。また明日くる!」
「ばいばい、菖蒲ちゃん。」
鴇羽の部屋をでて、玄関のほうへ向かう。
「ときはのお母さん!おじゃましました!」
「…ええ。ありがとう、またきてね」
そう言って笑う。
私は笑顔でドアを開けて家に帰る。
幼稚園で仲良くなった鴇羽とは、小学校に行っても仲良くしている。
もう4年生になった今でも、仲がいいのはいいこと。
でも、鴇羽の体の弱さはよくはならなかった。
幼稚園の時から、たまに休んでいたりはしたけれど、小学校に入って、学年が上がるごとに休む回数が増えていった気がする。
鴇羽の体を心配しながら、私は家に着いた。
「ただいまー」
「おかえり。鴇羽ちゃん、どうだった?」
「んー、プリンには喜んでた。」
そう言って私は自分の部屋に行く。
この時は、鴇羽のことも、鴇羽のお母さんのことも、何にもわかってなかった。




