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アイドル宣言
「おかしいなぁ…」
強は、和人から借りたDVDをもう一度再生してみた。
ファイヤーバキューンのライブ映像が流れる。
「未希の姿は何処にも写ってないな…」
早送りをしてもメニュー画面を見ても何処にも写っていなかった。
「いったいどういう事だ…」
強は眉間に皺を寄せ難しい表情をした。
コンコン
ドアのノック音の後にドア越しに未希の声がした。
「お兄…はっ…入っていィ?」
「いいぞ…って…未…希?」
「お兄…こういうの好きなんでしょ…」
半分開いた扉の向こうに、ファイヤーバキューンのレプリカコスチュームを着た未希が顔を赤面させ、虚勢を張ってぎこちない仁王立ちで立っていた。
視線はふわふわと定まっていなかった。
「どうしたんだ…未希?」
「わ、わわったし…お兄専属…損よう…専用のあい、アイドルになります!」
「はい?」
強は、斜め上の妹にたいして、驚きのあまり、はい以外言葉が見つからなかった。