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妹こんとろ〜る  作者: 立木 剣
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30品目幕の内

評価ポイントいただきました。やはり、いただけるとすごくうれしい。

ありがとうございます。

「さて、マリコはどんな塩梅かな?」

強はマルチリモートコントロール、通称マリコをいじり始めた。

取扱い説明書を見ながら、DVDプレイヤーやテレビにスマホ、パソコン等の設定をしていった。

説明書の間から一枚の紙が床に落ちた。

「なんだこれ?」

拾い上げると、訂正と追加機能について、と書いてあった。

「なになに…電池を逆に挿入すると、貴方の愛しい妹がコントロールできます?…なんの話だ…寄り添ったり、手を繋いだり、キスをしたり、お望みとあらば最後まで、全て貴方の思い通りです…」

文章の最後に眼をやるとそこには、イー企画 お兄担当 山本未希と書いてあった。

「未希の奴、また人の物に悪戯して…」

普段は従順でものわかりも良く、家事もそつなくこなす、まさに理想の妹なのだが、強の物や交友関係にいちいち首を突っ込んでくる困った一面を持っていた。

この間は、友人から借りてきたアイドルのDVDのジャケットに未希のプリクラが貼ってあったり、スマホの画面いっぱいに未希の顔が写っていたりした。しかもその顔は軽く眼を瞑り、唇を尖らせてキスを求める乙女の姿だった。

「こういう事がなければ可愛いらしい自慢の妹なんだけどな…はぁぁぁぁ」

強は大きくため息をつくと、マリコの設定もそこそこに床についた。


早朝、未希はお兄のお弁当を作る前に、お兄の部屋に忍び込んでいた。

「はぁ、お兄の寝顔…う〜ん可愛い…」

未希は目をトロ〜ンとさせながら強の寝顔を覗き込んだ。

「はっ!いけない…やばっ!声大きかったかな」

未希は強の顔を観察した。まだ、眠っていることを確認すると、小さく息を吐いた。

「ふぅ、お兄が鈍感で良かった」

そう言いつつも、未希は強の鈍感な所があまり好きではなかった。

未希は日頃から好き好きオーラ全開で強に接しているのに、反応は薄く少し苛立ちすら感じているのであった。「だいたい、私を本気にさせたのはお兄のせいなんだから…」

そう呟きながら、未希はマリコの電池を逆さに入れ換えて、DVDプレイヤーと自分にリモコンを交互に向けた。

「これでセンターはいただきよ」

未希は強の前髪を左手で軽く撫でると部屋を後にした。


「気合いを入れてお弁当を作りますか♪先ずはお兄の胃袋を鷲掴みにするんだから…ヨシ!未希頑張る!」未希は右肩をブンブン回しながら、格闘技の試合に向かう選手のように気合いを入れて台所に向かっていった。



「おはよう♪未希、随分気合いが入っているんじゃない?彼氏でも出来たの?」

先に台所で料理を始めていた父が声をかけてきた。

「パパ、おはよう♪大丈夫よ私の彼は未来永劫お兄ただ一人よ♪」

「また、そんなこと言って兄弟なんだから、いい加減諦めたら…」

「ふっふっふ、未希に不可能は無いのだ!」

「何なのかしらねこの自信は…」

「パパ、手が震えてるよ…」

「…きっとあれね…昨夜腕立て伏せをやり過ぎたせいよ!」

「ほんとに?」

「ほんとよ♪」

「パパ、試合近いの?」

「来週、武道館でね」

「ねぇ、久しぶりに見に行っていい?」

「いいけど…珍しいんじゃない?最近、空手始めたり、やっぱり彼氏できたんじゃないの?」

「違うの!お兄をね!悪女達から私が守ってあげるの♪だから未希全方位完璧少女になるんだもん♪」

「はぁ、私としてはもっと普通の女の子になって欲しいんだけどなぁ」

「パパ、それは、無理な相談よ」

「どうしてよ?」

「だってパパの娘だもん」

「パパの駄目女好きが感染したかしら?」

「むっ、パパ…うちのママを悪く言わないで…私のお兄を産んでくれた崇高なる存在なんだからね!」

「崇高ね…写真越しのママはそうかもしれないけど…」

「お兄だって格好いいんだからね!」

「あくまで見た目ね…」「パパ、見た目は非常に大事よ!私、お兄の写真でご飯三杯いけるわ!」

「自分の兄貴の事、塩鮭みたいに言わないの!強が知ったらきっと…」

「お兄が知ったら…?」

未希は不安そうにスキンヘッドの強面な父の顔を覗きこんだ。

「…」

「…」

「なにも感じないかもね?」

「へっ?」

「だって、さっちゃんそっくりの性格じゃない?きっとなにも感じないわ♪」


「人を不感症みたいに言わないでよ!全く…正志さんも女みたいに娘とガールズトークしないでよ…朝っぱらから糖度高くて胸焼けしそうだわ」

「ママおはよう」

「咲子 おはよう」

「おはよう、今さら、ダンディな声出さなくていいわよ」

「折角、ファンサービスしたのに…」

「ありがと…それより二人して随分豪勢なお弁当じゃない遠足でも行くつもり?」「いや、いたって普通の30品目幕の内だけど…」

「それって普通って言いません!折角作っていただいたので今日は持っていきますが、明日からおかずを減らしてください」

「折角、栄養と見た目のバランスを考えて作っているのに…そんな言い方しなくても…」

正志は粒羅な瞳に涙を浮かべた。

「ごめんなさい…でもね正志さんのお弁当完璧すぎて、職場でどうしても目立ってしまうの…だからお願いお弁当のバランスも大切だけど、職場のみんなとのバランスも考えて欲しいの」

「えっ!さっちゃんもしかして、私のお弁当のせいでいじめられてるの?」

「そんなことは無いんだけど…いつも豪勢で皆輝いた目で貴方の弁当を見ているわ…はずかしいくらいに…」

「…」

「正志さん?」

「咲子!」

「はいぃ?」

「何も感じないなんて言って悪かった…君を苦しめていたなんて…俺は」

「正志さん」

二人は超至近距離で見詰め会った。

「いいなぁ…私もお兄と見詰め会いたいなぁ…」



正志の作る咲子のお弁当は翌日から半分ほどの大きさになり、小さな水筒が追加された。







職場で咲子は弁当を広げた。

「あれ?咲さん(職場での呼び名)いつものお弁当は?」

「今日から、普通サイズなの♪」

「その水筒は?」

「このお弁当じゃ栄養が足りないらしくて…」

「へぇ〜それで充分な感じですけど…」

「スペシャルスープらしいんだけど…試合前に彼が飲んでるのと一緒なんですって…」

「咲さん、なんだか嬉しそうですね…」

「やっぱりわかっちゃう♪」

咲子は一口スープを飲んだ。

そのあと、一言も喋らずに黙々と食べ続けた。

その翌日には、お弁当が豪勢なものに戻っていた。

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