矢鷹真という人間(中編)
お久し振りです。
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気付いてからしばらくにやけてました。
「君が真君?」
いつも通り人を避けて施設にある小さな図書室に避難していたある日、俺の前に20代前半くらいの一組の男女が現れた。
勿論若き日の矢鷹夫妻だ。
一人の時間を邪魔された俺は正広さんの質問には答えず、二人を睨み付ける。
施設にいる他の子供に向ければ泣かれること間違いなしの俺渾身の睨みだったが、夫妻は全く気にした様子もなく、にこやかなまま話し始めた。
「初めまして。私達はあなたのお母さんの昔の知り合いで、矢鷹と言います」
「・・・母さんの?」
無視して本を読もうと思ったけど、那美さんの言った聞き捨てならない単語を聞いて思わず驚きの視線を夫妻に向ける。
(でもなんで今更・・・)
あの事故からもう一年も経ってるってのに・・・。
一瞬、両親の葬儀に来ていた親戚達の顔が頭に浮かぶ。
もしかすると親戚達の方で事情が変わったのかもしれない。
何か目的があってこの人達を寄越したんじゃ・・・。
すると、正広さんが俺の考えを読んだかのように教えてくれた。
「あの僕らが先輩の死を知ったのは事故から半年経ってからでね。その頃には君はとっくにあの薄情者達に施設へ移されていて、探していたら半年も時間がかかってしまったんだ。本当にすまなかった」
そういって正広さんは深々と頭を下げる。
正広さんの話したことの真偽を疑っていた俺は、まさかの行動に少々思考が停止した。
だってこんな子供相手に本気で頭を下げる大人を今まで見たことがなかったのだから仕方ない。
第一子供に嘘をつくためにわざわざ頭まで下げないだろう、普通は。
(しかも優しそうな顔してさらっとあの親戚連中を非難したぞこの人!?)
軽く天然記念物を相手にしているような気分だ・・・。
それに言っていることが本当なら、半年も探してくれていたと?
そんなことを思っていると、那美さんが椅子に座る俺に目線をあわせる。
「私達は学生時代にあなたのお母さんにとてもお世話になっていたの。その恩にむくいるためにも、私達は先輩に代わってあなたを守りたい」
那美さんが俺の目をまっすぐ見つめて言う。
「だから真君。私達と家族にならない?」
読んでくださり、ありがとうございました<(_ _*)>