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思い出した

 不意に身体に力が加えられたのが伝わって、意識がが覚醒し始める。


「━━ちゃん!キリちゃん!!お願いだから起きて!」


「だめだ、全然起きない。さっき水は全部自力で吐き出してたから、そろそろ起きるはずなんだけどなぁ」


「こうなったら僕が人工呼吸で━━」


「(トドメ刺す気)かよ・・・ゴボッ」


 いろんな意味で止めろよ。という念を込めて、睨み付けてやると目の前のバカとその他天然二人は目を見開いた。


 重い身体に鞭打って起き上がろうとする。が、


「キリちゃんおきたぁぁ」


「うわっ」


 飛び付いて来た少女は天然一号、矢鷹やたかココロ。さっき俺に人工呼吸しようとしていたバカ、矢鷹シンの双子の妹だ。


 シンよりは落ち着いていて賢いはずだが、やはり兄妹どこかしら似る。現に今、こいつが考えなしに飛び付いて来たせいで、俺は危うく石で頭を打つところだった。


 そうならなかったのは後ろで天然二号こと矢鷹正広やたかまさひろ(名前で分かると思うが双子の父だ)が咄嗟に背中を支えてくれたからに他ならない。


「こらこら、キリ君はさっきまで溺れていたんだよ?・・・今度は頭を打たせる気かな?」


 見ると矢鷹父の服や髪から水が滴っている。どうやら川の中から助けてくれたのは矢鷹父らしい。


 そして、父に言われたココロは顔を真っ青にしてすぐさま俺から離れ、岩の上に正座した。


 矢鷹父は爽やかな笑顔を浮かべているけど、後ろでは吹雪が吹き荒れている。


  今は真夏だし、例え全身ずぶ濡れであっても、寒いなんてことはあり得ないんだけど・・・。


 俺はスッと矢鷹父から視線を逸らした。


 少し離れた所にいるシンも、父への恐怖に震え上がってその場に正座している。


 それから双子は矢鷹父の説教を仲良く聞いていた。


 そんな状況を俺は、


(自業自得だバーカ。ざまぁみろ)


 と、一人内心で嘲笑っていた。もちろん顔に出すようなへまはしない。


 全ては20分前に遡る。


  矢鷹家が家族でキャンプに出かける際、双子の幼なじみである俺も誘われて着いてきた。


 キャンプ地に着いてたら、俺達三人は揃って近くの川原に遊びに行った。そして、そこでこのバカ共は喧嘩を始めたのだ。


 しかも喧嘩のきっかけは双子のどっちが考えた遊びで俺と遊ぶかというもの。


 当時、普通の純粋で大人しいガキだった俺は、二人に両手を引っ張られてオロオロしていた。


 そこからは言い合いで先にキレたシンがココロの肩を弾き、ココロは咄嗟に俺の手を引き、足場ギリギリに立っていた俺は見事に川に落ちた。


 はい、以上。


 そんなわけでこいつらが親に叱られるのは自業自得だし、庇う気はない。そんな義理もないし。


 矢鷹父の膝の上という特等席で、どんどん小さくなっていく二人の様子を眺めていた俺は今度は矢鷹父に視線を向けた。


(やっぱ正広さんだよなぁ・・・。俺が知ってるのより、少し老けてるけど)


  30代半に差し掛かったのであろうこの人は、俺の記憶にある姿程若々しくはない。


それに少し痩せて、頬の肉も落ちたような気がする。


  あれから少なくとも7年は経っているし、変わっているのは当然。


  それでも、元々毎日顔を合わせていた相手が一気におっさんになって目の前にいるというのは、やっぱ違和感がある。


  まぁ、『坂口桐さかぐちきり』としての記憶がある分まだましだけど。

 

  ・・・さっきからこいつ、何一人でブツクサ言ってんだ?って感じデスヨネ。うん、わかるよ。俺だってあんたの立場だったらそう思う。


  もう結論から言ってしまおう。メンドイし。


  俺は元々まことって名前の別人で、死んで坂口桐として生まれ変わりました。


  ちなみに生前矢鷹父こと矢鷹正広の、息子でした。


以上!

ありがとうございました<(_ _*)>

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