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へたれな私ともみじ

 あの日、見えなくなった帽子を届けてくれた女性がいた。

 その女性は、高梨紅葉(たかなしもみじ)。

 不器用で、でも、とても優しい彼女との出会いだった。

 紆余曲折あったけど、私は彼女と一緒にいる。

 まさか、最初に痴漢と間違われるとは思いもしなかったが、なんとかやっている。 


「なーに、やってるの? 」

 彼女はいつも怒ったような顔で僕に聞く。

 私は知っている。

 彼女は怒っているわけではなく、あれで笑顔を浮かべているつもりなのだ。

 でも不器用な彼女は、笑顔を浮かべようとするを顔が引きつり、怒っているように見えるのだ。

 なんでもないよと私は笑って返す。

 それが私達のいつものやり取りだ。


「ねえ、やっぱり笑顔の練習した方がいいかな?あなたの両親に会うのが不安なの。誤解されるよきっと」

 目を伏せ、心配そうに尋ねる彼女に、私はいつものように彼女に返す。

 

「今のままでいいよ。大丈夫、今の君が最高だから。両親なら分かってくれるから、大丈夫。何の問題もない」

 そういうと、彼女はもみじのように真っ赤な顔をさせて怒る。

 真っ赤な顔をして怒るのだ。

 私は、それがとても愛おしい。

 彼女の怒っている表情が、彼女の全てが愛おしい。


 そして、何よりも私は怖いのだ。

 彼女が、笑顔を浮かべることができたら、私の前から消えてしまいそうで。

 とても不安なのだ。

 

 だから、私は彼女を宥めながら、心の中であやまる。


 ごめんね。

 もう、もうちょっと待って。

 結婚したら、一緒に練習に付き合うから。


 と心の中であやまる。


 山々が紅葉(こうよう)で色づき、紅葉(もみじ)が真っ赤に染まる時、私達はまた出会った。

 怒ったような顔で笑う君と、また出会う事ができたんだ。

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