もみじがいなくなって
小学生だった頃に、彼女がいなくなって、随分経った。
少年だった私は成長し、大人になり、とある企業に就職した。
就職した後は、ただ、がむしゃらに働いた。
いろいろな事があったけど、私にとってその時間は大切な時間だった。
そして、仕事に慣れ、長期間の休みを使えるようになった頃、私は一時的に故郷に帰ってきていた。
透き通るような晴天の秋の朝、私は、小さな頃に遊んでいた山を登っている。
私は、そこにあるものを探しにきていた。
それは小さな切株だった。
それは彼女との思い出の場所。
それは僕が彼女との思い出を埋めた場所。
私は切株を見つけると、持ってきた小さなショベルを切株の前につきたて、地面を掘り始めた。
そして、見つけた。僕が書いた彼女への手紙を。
手紙を見つけた瞬間、突風が吹き、私が被っていた帽子は風にさらわれ、舞い上がった。
透き通るような雲一つないそらに、風に吹かれて白い帽子が揺れながら遠ざかっていく。
でも、それよりも私は目の前の光景が信じられないでいた。
目の前には……。
そんな私の心とは関係なしに、風に白い帽子がゆらゆらと揺れていた。