囚われの少女2
「あなたといっしょになれたことが幸せに思います。」
ジンノがナーシャの顔を見つめて手を当てる。
「俺にはできた嫁、娘のミライがいるだけで俺には勿体なさすぎる」
「そうですね、あなたには、私がいますもの」
見つめ合う二人は、自然にお互いの唇を重ねる。
吹き抜ける風が二人の邪魔をするようにナーシャの麦藁帽子が風に乗りに飛んでゆく。
風に乗って、高く浮上する麦藁帽子はゆらゆらと舞うようにミライの頭の上に被さる。
ブカブカの麦藁帽子を持って、ジンノとナーシャの元にやってくる。
「これ、ママの帽子でしょ?」
ミライから麦藁帽子を受けるとナーシャはにっこりとほほ笑む。
「ありがとう、ミライ」
元気よく、頷くミライは、次に、お花畑けに足を向ける。
娘に声をかけようと手を伸ばす。
「ミライ……」
遠ざかるミライの姿が、ぼやけるように遠のいてゆく。
そこには、ミライの姿があるはずなのに黒くローブで身を包んだ姿。
「まったく、おじさんは誰と間違えてるの?」
顔も見えないフードを取ると見覚えのある人物が姿を現す。
「お前、伊砂か……ここは、どこだ?俺はあの後……」
「おじさんとエリサお姉ちゃんは捕まえられて。零十字架と呼ばれている組織がエリサお姉ちゃんが狙いだったのは理解できたけど、関係のないおじさんまで捕まっていることが疑問なんだよね?」
(もしかして、俺のこの力と何か関係あるか?)
「それにおじさん、私のことをミライって子間違えて叫んでたけどそんなに似てるわけ?」
「ちょっと、待て、なぜ、伊砂のこと知っている?」
小悪魔のように伊砂は答える。
「こんな、面白いこと教えられない」
ジンノは久々とかちんとなって大人の権力を振りかざす。
権力と言っても主に伊砂のほっぺを抓る、お仕置きするだけでこれといってどうこうするわけでもなかった。
伊砂はジンノの動きに順応して、よける。
意地になってぽっぺを抓ろうとするが、ジンノは空振りばかり。
そんな中、伊砂はぼそぼそとつぶやく。
「まさか、カタブツそうな、おじさんにそんな過去があったなんてね」
一瞬、動きが止まった、伊砂は、ジンノの捕まる。
ぐりぐりとつねられたほっぺは、次第に真っ赤に腫れあがる。
巡回中の兵が、伊砂とジンノのやりとりに気が付く。
「侵入者だー」
荒々しく、サイレンも鳴りびくと、伊砂はあっさりと軍服兵の元に近寄る。
『にひ』っと軍服兵に見せると次の瞬間、手刀が首元を捕え、糸が切れた人形のように倒れ込む。
次の軍服兵が来る前に、部屋を飛び出ると通路が左右に分かれる。
足音と逆の通路を突っ切る。
ジンノは振り回させるように狭い通路で頭をぶつける。
止まらずに走り抜ける伊砂は前方に二人組の兵を捉える。
伊砂はジンノの腕を離すと、全速力で兵たち近づく、足音に気がつく軍服兵たちはとっさの判断で剣を抜こうとする。
伊砂はお構いなしに兵たちの間をスライディングして抜ける。
軍服兵たちは、何が起きたかわからずに、少女の姿を追う。
「こっちだよ」
振り向く前には伊砂は空中で兵の首元に手刀を振りかざす。
休む間もなく、伊砂は軍服兵の足元を水面蹴りをする。
バランスを崩した軍服兵は勢いよく後頭部ぶつけて、目を回す。
何事もなかったかのように立ち上がる。
伊砂はジンノの腕を掴み、奥への通路に消えていくのだった。