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LOST EYE  作者: くろろのーむ
序章 旅
1/6

機械じかけで動く、美しい町

 満月の夜、砂漠を照らすのは月明かりだけである。 

 男は、見渡す限り地平線が広がる砂漠の中を歩く。

 いつから歩き続けたのか。

 なぜ、砂漠を歩いているのだろうか。

 男にはどうでもよかった。

 冷たい風が、砂埃とともに男に襲いかかる。

  ジャケットが風の力で強くなびく。

 体を丸め、眼帯が飛ばないように手で押さえる。

 そこから酷く、熱を帯びていた。

 失ったはずの左目の辺りから、さらに発熱するのがよくわかった。

 気が遠のくほどの熱さは、一度や二度のことではなかった。


 (また、俺の失った左目辺りが熱くなる)


  熱さに耐え切れずにしゃがみ込むと、冷汗も尋常じゃないほどに流れる。

 男の身体から闇のような物が浮かび上がるとやがて男を包み込むように球体へと姿を変える。

  暗闇の中、男を呼ぶ声と一筋のまぶしい輝く光その声は、光の奥から聞こえるようだ。


 『……き……てく……だ……』


 朦朧とする意識の中、無我夢中で声のする方に手を伸ばす。

 強く暖かな光に、安堵を覚えると気を許すかのように瞼を閉じる。


                 †


 目を開けると天井のファンがぼんやりと映り、次第に視点が定まるようになる。

 なにかの拍子に首が動き、額の上で温くなったタオルがベットから床に滑り落ちる。

 身体が鉛のように重く、だるくなった手を伸ばすとそのままベッドの下に転落。

 額をぶつけ、赤く少し腫れるたんこぶなるようだった。


「大丈夫で~すか?」


 膨れたたんこぶをなでながら、声のする方に振り向く。

 くりんとした大きな目が特徴的で、銀髪の肩ぐらいまで髪の長さ上品なブルー系のワンピース木で出来たようなサンダル。

 少女の細い手は、男の前に差し出す。

 男は、その細い手でありながらもしっかりとした力で立ち上がされる。 

 男の目には、少女の向こう側に広がる景色に圧倒された。

 辺り一面に、機械じかけで動く街並み町の真ん中だと思われるとこには大きな時計の目印であるような塔その塔を囲むように、エメラルドに輝くような水が取り囲む。


「あたしが、一番すきな景色なんです」


 銀髪の少女が目を輝かせながらつぶやく。


「俺も、これだけの景色にはお目にかかったことがない」


 銀髪の少女は、嬉しくなったように、小さく1回手を叩いて、すこし開けたとこで止める。

 それが、なにかの合図なのか男は驚く暇もなく。


「やっと、お話できましたね。何もお話をしない方だと思っていました」


「すまない。人と話すのは、何年ぶりかもわからない。何を話してよいのか……」


 うつむきかけた男は、何かを思うと何かを決意したのかのように、少女に向かって手を差し出す。


「俺はジンノだ。よろしく、頼む」


 銀髪の少女は、男の手を軽く握ると。


「エリサです。こちらこそ、よろしく、お願いします」


 これがジンノとエリサの出会いであり、運命の歯車が動き始めることなる瞬間でもあった。


                          †


 夕暮れ時に、日が落ち始めると、この町では、キャンドルに火を、灯すのではなく、電気という機械じかけの仕掛けより、町の明るさを保たれている。

 町は、電気で明かりが保たれているが、エリサ自身がクラシックな雰囲気に拘りがあり、おしゃれなキャンドルが、窓際に置かれてあったり、階段の端っこに、一段づつ置いてあると思えば、テーブルの上に、動物の形やらお花の形のキャンドル種類は豊富にあるようだ。

 エリサが、すべてのキャンドルに火を灯し終わると、豪華な食事がテーブルの上に用意される。色々と圧倒され続けたジンノも空腹には耐えきれずに、テーブルの前の椅子に腰を落とす。

 二人で食事を取るにしても食べきれないほどの量が目の前に並ぶ、ジンノが、最初に目に付けたのは、大きなステーキ肉にであった。

 迷うことなく、ステーキ肉をお皿に取ると、ジンノは唖然とする。

 エリサはジンノの倍以上にお皿にステーキ肉を何枚も盛り付けていた。

 開いた口が塞がらなくなり、エリサの豪快に食べる食事に目を奪われ、ジンノはフォークを握ったまま唖然とするだけであった。

 ステーキ肉が3枚ほどになるとエリサは急に手を止め、フォークをテーブルの上に置いた。


「実は、あたしもジンノさんと同じようにこの世界にたどり着いた一人なのです」


 息を吹き返したように、一口サイズに、切ったお肉を口に中にジンノは放り込んだ。


「……あんたも……『ごくっ』俺と同じ別の世界の人間ってことか?」


「ええ、この空に浮かぶ島は隔離島、不思議な島、色々な呼びなあるみたいだけど、ゼロの世界と呼ばれる。機械じかけで動いている町だそうです」


「俺にそんなことを話して何か理由でもあるのか?」


 気が抜けたようにエリサ。


「あたしは追われる身でありながら、長くここに滞在し続けた。新たな流れ者がゼロの世界に来た以上、均衡が崩れているはずです。」


「それは、どう……」


 突然の爆発音か何かかが鳴りびくと今度は、地面ごと唸りもあげるようにコンクリートの柱が砂煙を巻き起こしながら崩れ落ちる。 


「時計塔が崩れ落ちるなんて」 


 驚きを隠せない、エリサは、思わず手を口に当ててしまう。


 町人達が時計塔の回りに野次馬のよう群がる中、大きな悲鳴と共に人々がパニックに陥る。

  一人の青年が軍服の兵士により公開処刑のように剣で心臓を一突きされる。

  びくびくと震えながら、やがて青年は動かなくなる。

 軍服の兵士は血の付いた剣を掲げこう叫ぶ。


「このようになりたくなければ、我々の探す少女を差し出せ」


  人々は、さらに混乱するように、逃げ惑う者も入れば、怯えて動けなくなる者いる、混乱に乗じて、ジンノ達は、逃げだせたものの、エリサとはぐれてしまう。

 エリサを探すうちに、見知らぬ老人に止められる。


()十字架(クロス)艦隊が攻めてきている。あんたも逃げた方がええ、そっちに行けば無残に死だけが待ち受けておる」 


 見知らぬ老人を振り切って、エりサを探そうとする。軍服の兵士達は逃げまどう者達を容赦なく、切り殺す。 

 辺り一面、死体の山と血の臭いが充満する。

ジンノの前に、エリサの姿が飛び込む、そして、右目に眼帯をした軍服の男にエリサの目の前で剣を突き付ける。


「ようやく、見つけましたよ。ロストハートさん」 


「どうして、あなたが……」


 考える余裕もなく、ジンノは右目の眼帯の男に体当たりをする。 右目に眼帯の男は、ジンノの動きを読んでいたように、受け流されるようにジンノはその場に倒れ込む。

 近くにいた軍服の兵士を呼びつけると右目の眼帯の男は支持をだす。


「そちらの転んでいる方は、君が始末しておいてください。彼の勇敢さは、称しますが、私の任務をきたされるは好ましくありません」


「はっ」


 軍服の兵士は薄笑いを浮かべながら、一歩、二歩と近づく。


「おっと、悪く思うなよ」


 何かが込み上げてくるように、ジンノの心臓が大きく鼓動を打つ、左目が熱を帯びるものの意識だけははっきりとしてるようだ。 

 ゆらゆらと立ち上がるジンノは軍服の兵士が剣を振りかざしてるのもかかわらず、気合いのように「うぉおおおお」と叫ぶ。


 勢いよく、軍服の兵士の剣を振りかぶる剣を避けて、目の前の軍服の兵士にも左目に眼帯の男も目もくれずに、エリサの手を掴むと暗闇がジンノとエリサを取りまくように球体になるすると、みるみる小さくなるやがて豆粒くらいになる頃には完全に球体は消えてなくなる。


 右目に眼帯の男は手を押さえる。すべてを断ち切るように手を横に振る。


「撤収します」




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