二話
今日もアイツはお昼になるとやってくる。アイツのお手製弁当をこれまたお手製の弁当袋に詰めて。ワタシの分とアイツの分、二つの弁当をひっさげて。
「楓ちゃん、お迎えだよ!!」
とはワタシの友人である花ちゃん。名前のようにふわふわしてちっちゃくて可愛いいかにも女の子。そして主人公体質(これ大事)。よく漫画みたいな話とか冗談で言うけど、この子は地でそれをやってる。天然のどじっこで、嘘がつけなくて、すぐ赤くなる。男からの好意に鈍感で「わたしなんかもてないよぅ、楓ちゃんはいいなあ、頭がよくて背が高くて美人だし」とかふつうに言ってる。別に花みたいになりたいわけじゃ無いけどたまに苛っとくるときもある。良くも悪くも鈍感、それが花。
「楓さん、迎えにきたよ。早く食べよう」
とかいろいろ思ってたらしびれを切らしてやってきた。
「今日のご飯は豚のショウガ焼きと温野菜のディップと自家製スモークチーズだよ。」
と言う。どうでもいいけど自家製スモークって何だ、家でスモークしたら近所迷惑じゃん。
いつも食べる場所は決まってる。屋上に続く階段をさらに上ると小さな踊り場がある。そこに彼が持ってきたタオルケットを敷いて食べる。会話はどちらかが今日あったことを順番に話す。騒がしくないこの時間がすき。
「何でワタシなの??」
ふと思いついたことを聞いてみる。すると彼はワタシの好きな笑顔で言った。
「楓さんが楓さんだから好き、寝てるとき、眠いのに必死に起きようとしてるとき、ご飯を食べてるとき、楓さんの笑顔、声、泣いた顔、驚いた顔全部、楓さんの一部だと思うといとおしいと思う」
なんて大まじめな顔をして言うから・・・。
いまきっとまっかだと思う、恥ずかしかった、でもそれ以上にうれしくて、いとしくて心がほっかりした。
「ワタシも好き」
何がなんて言わない、だってキミならわかるはず。
「どうしようすごくうれしい、・・・キスして良い??」
良いって返事をする前に口をふさがれてた。
気持ちを確認して絆が深まった、ある晴れた五月の日。