小川 南①
顔を見た瞬間に、雷にうたれたみたいな気がした。
ほとんど一目惚れのレベルで目が離せない。
新人研修の一環で応対した、取引先の人。
指導官の土田さんに紹介された方。
名刺を渡す時、手が震えた。
渡された名刺には、「大木圭介」とあった。
きっと、運命。
私は、男の人が苦手だ。
高校時代に告白を断ったら、数人でレイプされかけた。
なんとか未遂ですんだけど、学校中どころか周辺の高校にまでレイプされたという噂が広がって、学校に行くのが苦痛になった。
義父──母の夫──の養女という立場では、転校させてほしいなどということもできない。
レイプされた女なら、何度レイプされても構わないだろうなどと考える頭のおかしい連中に狙われているのは、とても怖い。
そんな時、義父が私の下着をいじっているのを見付けた。
気持ち悪くて死にそうだったけど、なんとか一人暮らしと転校を勝ち取ることができた。
奨学金を使って短大に通い、内定をもらった後で籍を抜いて義父との縁を切った。
新人研修ではあちこちの部署を渡り歩くから、営業には1か月くらいしかいなかった。
だから、大木さんと顔を合わせていられたのも1か月程度。
でも、きっとまた会えると信じた。
あの人とは、運命で結ばれているはず。そう信じた。
そして。
行きつけのコンビニで、あの人に会った。
あのコンビニで会ったということは、きっと近所に住んでるんだよね。
やっぱり運命なんだ。
また会いたいって思ってた人が、偶然、ご近所さんだなんて。
私が唯一怖くない人。
初めて好きになった人。
信じよう、運命だって。
運命なら、何もしなくてもきっとまた会える。
偶然を積み上げて、運命だって証明する。
がっつかない。
きっとまた会える。また話せる。
いつか、この恋心を打ち明ける。




