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托卵されて離婚した俺が再婚して娘をもうけた話  作者: 鷹羽飛鳥


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2/9

大木圭介②

 あれから8年経った。

 美里とも美奈とも、一度も連絡を取っていない。

 俺は数度の転勤を経て、2年前に本社に戻ってきて営業をしている。

 4月中旬、取引先を訪ねたら、担当の土田さんが若い女性を伴っていた。

 新人研修らしい。

 緊張した手つきで渡された名刺には、「小川南」とあった。


「しばらくこの小川もご一緒させてください」

「小川と申します。よろしくお願いします」


 新卒か。22かな。

 美奈も今年で21、社会人になっていてもおかしくない。

 そうか、もうそんな年になるのか。

 いかんな、このくらいの子は、みんな美奈に似ているような気がする。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 暑気払いの帰り、コンビニに寄ったら、後ろから声を掛けられた。

「大木さん?」

「はい?」

 よく見ると、小川さんだった。

 最近は独り立ちしたのか、同席しなくなっていたから、数週間ぶりだろうか。

「もしかして、小川さん?」

「はい、小川です。ご無沙汰してます。

 この辺りに住んでらっしゃるんですか?

 私も近所なんです」

「そうですか、奇遇ですね」


 いや、近所とかそういう情報はいらないんだが。

 そりゃ同じコンビニに来てるんだから想像は付くが、流すのが大人の対応ってもんで。

 こっちから尋ねたら問題になる事案だ。

「大木さん、こちらに住んで長いんですか?

 私、この春からなので、美味しいお店とかご存じでしたら教えてください」


 この辺は社交辞令だろう。

 適当に二言三言交わして、別れた。




 その後、数回、同じコンビニで見かけたが、会釈ですませた。

 本当に近所に住んでいるらしい。

 この辺では、ここのコンビニが一番大きいから、彼女もよく使うんだろう。

 週に一度会うかどうかくらいで一月ほど経った頃、小川さんから声を掛けられた。


「大木さん、よくお弁当買われてますね」

「いや、恥ずかしながら、料理はさっぱりなので」

「そう、なんですね」


 俺がバツイチなのは、土田さんから聞いているんだろう、一人暮らしなのかとは聞いてこない。

 相手の地雷ワードを避けるための情報収集は、営業の基本だからな。




 時々話をするようになって、「こんなおじさんと話しても面白いことはないでしょう」と言ったら、彼女は神妙な顔をした。


「私、父の顔を知らないんです。

 顔どころか、名前さえ。

 私生児なんです。

 母はもちろん父が誰か知ってるんでしょうけど、教えてくれません」


 仕事相手でしかない俺に話すには、重すぎないだろうか。

 口を挟めずにいると、

「大木さんといると、ホッとするんです。

 会社のこととか抜きで、たまにおしゃべりに付き合っていただけませんか」


 会社絡みの知り合いでしかないのだが、何を求められているんだろうか。

 美奈と同じ年代ということは、彼女の母親も俺くらいなんだろう。

 父親が同年代という保障はないが、彼女の中では、父親も母親と同年代のはずだ。

 だからといって、俺に父親への憧憬を向けられても困るんだが。

 なにせ俺は美奈の父であることをやめてしまった人間なんだから。

 とはいえ、こんな寂しそうな風情でいられたら、無碍にもできない。

 取引先の社員でもあるのだし。

 コンビニで顔を合わせた時に少し立ち話をするくらいなら、まあいいか。

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― 新着の感想 ―
かなりの歳の差ですね。 名前や境遇が似てるのが気になりますが、まさか!?
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