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托卵されて離婚した俺が再婚して娘をもうけた話  作者: 鷹羽飛鳥


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1/9

大木圭介①

「美奈が!?」

 娘の美奈が交通事故に遭って病院に運ばれたと連絡が入った。

 意識がない、と。

 妻の美里(みさと)に中学校から連絡が入り、俺に回ってきた。

 美里は昨日から大阪に出張中で、すぐには戻れない。

 取るものも取りあえず病院に駆けつけ、医師の話を聞いた。


「先ほど意識は戻りました。

 今のところ障害は見られませんが、頭を打っておりますので、念のため精密検査しましょう」




「意識は戻ったそうだ。念のため精密検査するそうで、まだ会えてない」

「そう、よかった! それなら、任せていい? 予定キャンセルすると後が大変だし」

「わかった」

 いいわけあるか!

 出張中だししょうがない、というのもわかるが、娘が事故に遭ったんだぞ。

 美里は、家族より自分の都合を優先するきらいがある。

 そういう性格だとわかってはいるが、こんな時くらい娘を優先できないのか。

 美奈の意識が戻ったこともあり、規則だからと俺は病院を追い出された。




 家に帰り、シャワーを浴びてベッドに入ったものの、眠れない。

 意識が戻ったとはいっても、頭を打っている。

 予断を許さない状況なんじゃないのか、今も。

 目をつぶると、幼い頃の美奈の思い出がよみがえってくる。


「パパ大好き♡ ミナ、大きくなったらパパのお嫁さんになる♪」


 幼稚園に入る前の美奈は、ことあるごとに「パパのお嫁さんになる」と言っていた。

 まあ、女の子にはありがちな話で、小学校に入る頃になると言わなくなった。

 照れくさくもあるが、娘を持った父の通過儀礼のようなものだ。

 小学6年になっても俺と一緒に風呂に入りたがり、初潮が来てようやく美里がきつく言って別に入るようになった。

 それでも、中学生になっても、3人で出掛けると俺と手を繋ぎたがる。



 美里──旧姓中林──とは、大学時代に籍を入れた。

 いわゆる「デキ婚」だ。今は「授かり婚」というらしい。言い方が変わっても実態は変わらない。

 美里は同じゼミに所属していて、その流れで付き合い始めた。

 避妊はしっかりやっていたつもりだったが、ある日美里から妊娠を告げられ、籍を入れた。

 幸い4年次の1月だったから、美里も問題なく大学を卒業できた。

 美里も別の会社に内定をもらっていたので、産休に入るまでの半年くらいは仕事もしていたし、育休後は復帰している。

 俺自身も、思いがけず就職早々子育てというなかなか過酷な状況になったが、子供を持つということは悪いことでもなかった。

 娘のおむつを換えることになるなど、大学時代には考えもしなかったな。





 それでも少しは眠れたらしい。

 気が付くと朝になっていた。

 適当に朝食を食べて、病院に連絡を入れると、美奈は精密検査中なので午後3時に来るよう言われた。

 洗濯などしてから、病院に向かう。

 受付で名乗ると、少し待たされて医師からの説明を受けた。

「精密検査の結果、骨折などもなく、CTでも脳に問題ありませんでした。

 こちら、検査結果になります」


 見せてもらった紙には、よくわからない数値が並んでいたが、その中で目に留まったものがあった。

「あの、血液型がAって…

 美奈はO型だったはずですが」

 美里からはそう聞いている。

「いえ、A型で間違いありません。

 O型というのは、いつの検査ですか?」

「小学校に入った時だったと思います」

「そうですか、一応確認された方がよろしいかと思います。

 まあ、A型はO型の血液を輸血しても問題はありませんが」


 美奈がA型?

 俺がB型、美里がO型で、美奈もO型だったんじゃなかったのか?

「あの…B型の父とO型の母からA型の娘が生まれる可能性は…」

「まずあり得ません」

「そうですか…」

 美奈が俺の子じゃない?




 俺は、俺と美奈のDNA検査を依頼した。

 結果は、父子の可能性ゼロ。

 精密検査とDNA検査の結果を見せて、美里を問い詰めた。

「美奈の血液型はOだって言ってたよな。

 これはどういうことなんだ?」




 美里は、俺と同時期に複数の男とそういうことをしていて、妊娠がわかった時に、一番将来性がありそうな俺を選んだということだった。

 そして、二度と連絡を取らないこと、美奈の養育費は出さないこと、慰謝料も求めないことを条件に、美里と美奈は出ていった。

 あれだけ俺に懐いていた美奈は、目に涙を溜めてはいたものの、「じゃあね」の一言だけで振り向きもせずに去って行った。

 こうして、俺は、妻も娘も失った。

 いや、最初からそんなものはいなかったんだ。

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― 新着の感想 ―
「最初からそんなものはいなかったんだ」ってショックなのはわかるけど主人公もかなり薄情だよね。 見る目がなかった本人と違って子供は親を選べないんだよ。  一番の被害者で一番傷ついてるのは娘じゃないの? …
奥さんの美里さん、なんとも合理的というか打算的というか。 そしてバレたらすぐに離婚て、モヤモヤするスタートでした。 美奈ちゃんの気持ちはどうだったのでしょうね。 タイトルからすると、圭介さんは最後は幸…
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