いきなり騎士団長直属の団に入団が決まりました 2
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聖魔法騎士団の入団試験の今年の合格者は、わたしを含めて僅か四名だ。
入団試験の受験者数が、筆記試験を入れて三百名。そのうち、実技試験に残れたのが約五十名と考えると、とんでもない倍率である。
入団と共に叙勲されるので、わたしは今日から準騎士爵の爵位持ちだ。ただ、いちいち家名を新しくとったりはしないので、名前はそのままマルガレーテ・ハインツェルである。
……姓を持っていない平民は、叙勲と共に姓を取ったりするみたいだけどね。
貴族は複数の爵位を保有するのも珍しくはないが、その中で一番高い爵位を名乗るのが基本なので、わたしが準騎士酌を名乗る日は来ないだろう。わたしは伯爵ではないが伯爵令嬢なので、名乗る際はハインツェル伯爵令嬢と名乗るのである。
だが、準騎士の称号を持っているのはカッコイイ気がするし、肩章突きの真っ白い制服もとってもカッコイイので、たまらなくいい気分だ。
聖魔法騎士団の仕事場は、城の敷地内にある騎士棟である。
それぞれの騎士団に一つ棟があるので、所属する団の棟に通うことになる。
……ええっと、わたしは~って、えええええええ⁉
第一聖魔法騎士団の棟の前に、合格者四名の所属先の振り分けが張り出してあるので確認に行ったわたしは、大きく目を見開いた。
だって、わたしの所属先が第一聖魔法騎士団だったからだ。
一から五の団がある聖魔法騎士団の中でも、団長が総帥も務める第一聖魔法騎士団は別格の扱いだ。
普通、新人は配属されないはずである。
……新人は第二から第五の団のいずれかに配属されるはずでしょう?
合格者数が四名だったので、わたしはてっきり二から五の団にそれぞれ一名ずつ配属されるのだと思っていた。
張り紙を見て茫然としていると、第一聖魔法騎士団の棟から、見覚えのある女性聖魔法騎士がかけてくるのが見えた。
「あ、いたいた! マルガレーテ!」
笑顔で手を振りながら走って来たのは、入団試験の際にわたしの試験監督を務めていたミヒャエラさんだった。
「ごめんねえ、驚かせたでしょう? とりあえず入って。ざっと棟の中の説明をした後で、マルガレーテの仕事部屋を案内するから」
「あ、あの……、ええっと、わたし、本当に第一聖魔法騎士団所属なんですか?」
「そうよ。入団試験のときのマルガレーテの成績、すごくよかったの。それでディートリヒ様が急遽所属先をうちの団に変更させたのよ。本当は第二だったんだけどね。おかげで第二の団長が怒る怒る」
「へ、へえ……」
そんな勝手が許されるんだ。さすが総帥で公爵で王弟殿下……。
……あ、でも待って! ってことは、ディートリヒ様の団ってことじゃない! ラッキー‼
所属の団が違えば、関わり合いになる機会も非常に少なくなるが、同じ団ならそれなりに接点があるだろう。
ありがとう神様‼
憧れの人を団長と仰いで仕事ができるなんて、こんなに素敵なことはないだろう。
もともと楽しみにしていたが、一気にやる気が出てきた。
「それから、わたしがマルガレーテの教育係になったからよろしくね。あと、ディートリヒ様は……その、とっつきにくいところがある人だけど、あんまり気にしないで。仕事上で差別や区別はしないけど、女性騎士とは距離を取る傾向にある方だから」
……奥さんが浮気相手と蒸発したから女性嫌いになったってあの噂、本当だったんだ。
事情を察して頷いていると「その顔だと知っているのね」とミヒャエラさんが苦笑する。
「そう言うことだから、ディートリヒ様とは上司と部下として、常識の範囲内で接してくれる? あの顔と身分でしょう? たまにいるのよね、必要以上に距離を縮めようとして、怒らせる女の子が……。ああ、安心して、うちの団にはそういう子はいないから。いても追い出しちゃうし、ディートリヒ様」
……お、追い出されるのは嫌だから気を付けよう……。
「あ、ここがマルガレーテの部屋よ。ちなみにわたしは隣の部屋を使っているから、困ったことがあったらいつでも呼んでくれていいから。それから、仕事中の飲食はオッケーだけど、そのときはここのソファ席を使うこと。前に書類仕事をしながら紅茶を飲んでいた団員が、うっかり書類に紅茶をこぼしてダメにしたことがあってね~。それからライティングデスクでの飲食が禁止になったのよ」
騎士団に届けられる書類には重要なものも多いだろう。そんな書類をダメにしたら始末書ものだ。書
類の重要度合いによっては、聖魔法騎士団から追い出される可能性もある。
わかりました、と頷くと、ミヒャエラさんはわたしの部屋のライティングデスクの上に置かれていた予定表をわたしに見せた。
「これが今月の予定表。今月は遠出はないけど、王都内の病院への慰問が一回入っているわ。あと、騎士団の訓練場に、必ず二名の聖魔法騎士が待機しておくっていうルールがあって、マルガレーテはわたしとセットで行動することになるから、三週間後のこの日ね。今月が第一聖魔法騎士団の番なのよ~」
「そんなルールがあったんですね」
「そうなの。ほら、騎士団は聖魔法騎士団と違って血の気が多い人が多いでしょ? 訓練中にたまに大怪我をすることがあるのよ。小さな怪我ならポーションで何とかなるけど、大怪我はさすがにね。まったく、訓練試合で本気にならないでほしいわよねえ? ま、聖魔法が必要になる大怪我なんて、一週間に一回あるかないかくらいだから、たいていは暇つぶしにポーションを作りながら眺めているだけよ」
「あ、ミヒャエラさん。そのポーションのことですけど、団員になったので、もう販売許可は出ていると考えてもいいですか?」
「あら、ポーションを売るの? ……ああ、マルガレーテのお家は今大変なんだったわね。ええ、仕事で作ったポーションは聖魔法騎士団に納めてもらうけど、それ以外で作ったものは販売して構わないわよ。なんなら、適正価格で購入してくれる病院を紹介してあげるわ。たまに新人団員だって馬鹿にして買いたたく人がいるからね」
「ありがとうございます!」
「ただし、普通のポーション以外に、独自改良したポーションを売る場合は自分でプレゼンして頂戴ね。そうねえ……例えば、あなたが入団試験の実技試験のときに使ったようなポーションとか? あれ、ディートリヒ様が興味を示していたから根掘り葉掘り聞かれるわよ、きっと」
「え?」
「ほら、ええっと、病気の卵みたいなのが体に残っているから飲んでねって渡したポーションがあったでしょう? 病気の卵って言うのもはじめて聞いたし、何の効果が付与されているポーションなのかって、ディートリヒ様、興味津々だったわよ」
……あれ、もしかしてわたしが異例の第一聖魔法騎士団所属になったのって、それが原因だったりする?
「じゃあ最後に、ディートリヒ様に挨拶に行きましょう。そのあとはポーション作りよ。書類仕事はもう少し慣れてからね」
行くわよ~と気楽な感じでミヒャエラさんは歩き出したが、憧れのディートリヒ様に挨拶と聞いて、わたしはかっちんこっちんに緊張した。
……待って待って~! せめて心の準備を……‼
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