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ちょっと留守にしていたら家が没落していました  作者: 狭山ひびき


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聖魔法騎士団の入団試験 6

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「マルガレーテ、合格おめでとう~‼」


 試験の日から一週間後。

 合格者リストを見に城の入り口に向かったわたしは、張り出してあった紙に自分の名前があるのを見つけた。つまり合格だ。


 ヨアヒムの名前はなかったので、不合格だったのだろう。まあ、そうだろうとは思っていた。だって、わたしが知る限り、ヨアヒム、聖魔法ほとんど使えないもの。なんで試験を受けに来たんだろうって思ったくらいだわ。


 わたしが聖魔法騎士団の入団試験に合格したから、今日は一応ごちそうだ。

 まあ、ごちそうといっても、玉ねぎとパン粉でかさましした、わたしのお手製ハンバーグとスープ、それからパン。あとはデザートの、これまたわたしの手作りプリンである。


 借金を抱えてからお母様が料理を頑張っていたようだが、はっきり言って、お母様の料理は適当も適当だ。蒸した芋。塩水にちょろっと野菜を投入しただけのスープ。肉が手に入れば肉を焼く。そのくらいしかできないので、我が弟エッケハルトには大変不評だった。

 お父様はお母様が頑張って作っているのを知っているので、「美味しいよ~」と言いながら食べていたようだけど、お父様がそんなことを言うものだからお母様がそれ以上を目指すはずもない。


 おかげで、わたしが帰って来てからは料理担当はもっぱらわたしになっていた。


 ……だって、エッケハルトが泣きつくんだもん。可愛い弟の願いはかなえてあげたいじゃない?


 ただ、わたしの聖魔法騎士団への入団が決まったため、今後はそうはいかなくなる。

 何故ならわたしは日中は仕事なので、どうしても昼食はお母様に作ってもらわなくてはならないし、騎士に同行したり、慰問に向かったりする予定が入れば何週間も留守にすることだってあり得るのだ。

 そのため、わたしはお母様に簡単な料理を教えて、何とかレパートリーを増やしてもらった。

 料理って、こんなに手間がかかるのねえ~、なんて面倒くさそうな顔で言ってるから不安でしかないけど、息子のためなら頑張ると思いたい。


 ……待っていなさい弟よ。初任給が入ったら、美味しいお菓子を買ってあげるから!


 聖魔法騎士団の初任給は、月に金貨五枚だと聞いている。かなり高い。前世基準で五十万だ。

 その一部を、アイディアグッズを作るための材料費にあて、残りを生活費に回すつもりだが、贅沢をしなければ余裕のある暮らしができるだろう。

 この家の家賃は月に銀貨二枚だというので――使っていないぼろい民家だったので安かったらしい。ただし、雨漏りがするのが難点だ――、固定費に泣かされることもない。


 ……孫の手ならぬ猫の手も十本くらいできたし、このあたりで、売れるかどうか試してみたいわよね。


 わたしたち家族には商売の心得がないし、ツテもないので、売るならどこかの商会に話を持って行きたいものだ。また考えてみよう。


「そう言えばね、裏庭のトマトに花が咲いたんだよ」


 王都は、もうじき春が終わる。

 夏になれば、お父様がせっせと耕した裏庭の菜園から野菜が収穫できることだろう。


 ……トマトに花が咲いたと喜ぶ伯爵もいないわよねえ。


 だが、父のこんなのほほんとした様子に和むのも事実だ。


「僕も見たよ。トマトの花って黄色いんだね。実が赤いから赤いのかと思ってた」

「エッケハルト、トマトの実は、熟れたら赤くなるけど、熟れる前は緑色をしているのよ。そして緑色のトマトは全然美味しくないから、赤くなるまで待たないとダメよ」

「「「へー、そうなんだ~」」」


 エッケハルトだけじゃなくお父様もお母様も知らなかったのか。よかった、教えておいて。緑色をしたままのトマトが食卓に並ぶところだったわ……。おそろしい。


「じゃあナスも緑なの?」

「え? いやナスは紫色のままだった気がするけど、どうなのかしら?」

「苗をくれたご近所さんから、これは白いナスだよって言われたよ」

「じゃあお父様、そのご近所さんに収穫のタイミングも訊けばどう?」

「それもそうだね~」

「父様は猫の手を作るのに忙しいから、畑の世話は僕がするよ。僕ももう十歳だからね!」


 ……うぅ、うちの弟が頼もし可愛い! 待ってて、お姉ちゃんが早く借金を何とかして、元の生活に戻してあげるからね‼


「あ、そうだ。聖魔法騎士団に正式入団したから、許可を取ればポーションも売れるはずなのよ。余裕ができたらポーションも販売するわ」


 自分が使う分なら作るのは自由だが、ポーションを販売するとなると許可が必要になる。

 コーフェルト聖国に留学していたときは、訓練の一環で作っていて、一定の品質をクリアしていたら学園が買い取ってくれていた。だからお金が稼げていたのだが、こちらに戻ってからはそうはいかなかったのだ。それが、聖魔法騎士団入団でクリアになる。


 ……よし! アイディアグッズとポーションで、さっさと借金を返済して元の生活を取り戻すわよ‼ 打倒金貨一万枚 (十億円)! えいえい、お~‼





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