突入、そして 5
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パパのターン(笑)
「な、何の音だ⁉」
突然鳴り響いた爆発音に、ホルガーが驚いて腰を浮かせた。
(うわー、びっくりしたー)
マルガレーテが音が出る魔道具を預かっているとは聞いていたが、こんなに大きな音だとは思わなかったヘンリックは、純粋に驚いて目を見開く。
「すごい音ですが、爆発でもあったんですかねえ。まさかこのお邸ではないと思いますけど、念のため騎士団に連絡を取りましょうか」
「騎士団ですって⁉」
爆発という言葉よりも、騎士団という言葉にホルガーが強く反応を示した。
どうやら騎士団に乗り込んでほしくない何かがこの家にはあるのだろう。
そして、マルガレーテが魔道具を作動させたということは、何らかの証拠を見つけたに違いない。
(ま、呼ばなくても、もうじき騎士たちが来るだろうけどねえ)
心の中で笑いながら、ヘンリックはゆっくりと立ち上がった。
騎士たちが突入してくるまで数分というところか。
このまま放置していても、ホルガーは騎士たちに捕縛されるだろうが――、それだと少々面白くない。
のんびりしているヘンリックだって、やられたからには多少の意趣返しをしたいと思うくらいのプライドはあるのだ。
ホルガーが慌ててサロンを飛び出して行こうとしたのを見て、ヘンリックはぱちりと指を鳴らす。
途端に、サロンの扉が固い氷に覆われて、ホルガーがヒッと悲鳴を上げた。
「ハインツェル伯爵⁉」
「ホルガーさん、私は少々、あなたに訊きたいことがありましてね?」
にっこり微笑んで、ヘンリックは言う。
「去年、私に勧めてきた投資ですけど、あれ、本当に投資のお話だったのでしょうか?」
「ど、どういう意味ですかな……」
「いえね。私も少々知人を当たって探ってみたのですけど、似たような投資のお話を持ち掛けられて大損したという貴族が何名かいらっしゃるようでね。私と時期が違うというのに、海を渡った大陸の国では、似たような事業を起こして、同じように船が沈没してしまう事故がずいぶん多発しているようだなと思いまして」
ヘンリックだって、伯爵である。
それなりに顔はきくし、友人も多い。
フリードリヒの邸で似たような投資話で損をする貴族がいると聞いたときに、ヘンリックもツテを使って情報を集めていたのだ。
加えて、かねてから情報を集めてくれていた義兄ボーデ子爵からも、ヘンリックが乗せられた投資の不審点について連絡が入っている。義父によると、ヘンリックが持ち掛けられた投資話の会社は、実際には存在しない会社であった可能性が高いそうだ。
ただ、残念ながら騎士団ほど詳しい情報は集まらなくて、他にわかったのは、自分と同じような投資話を持ち掛けられて大損した貴族が、時期を異にして数名いたと言うことだけだった。
同じような事業を起こす会社が複数あっても不思議ではないが、そのすべての船が沈没したというのはおかしな話だ。
船は確かに嵐を受けたり座礁したりして沈没することがあるけれど、いくらなんでも短い間に多発しすぎている。
知人に投資話を持って来た男の名は、ホルガーではなかったが、偽名を使ってあちこちで似たような投資話を持ち掛けて金をだまし取っていたのであれば不思議でも何でもない。
実際、マルガレーテはホルガーが複数の偽名を使って架空の投資契約を結んでいた証拠を探そうとしているのだし、マクシムやフリードリヒが確信しているようなのでそうなのだろう。
騎士団が尋問すれば、真相はすぐに明るみに出るはずだ。
だが、ヘンリックはどうしても、ホルガーの口から直接詳細が聞きたかったのだ。
何故なら――もう一つ、気になることがあったから。
ホルガーが頬を引きつらせて、凍り付いた扉の隣の壁に背中をつけた。いくら後退ろうとも壁に穴が開くはずがないので、それ以上は逃げられない。
(口を割らせるには、もう少しだけ脅したほうがいいかなあ?)
ヘンリックが軽く手を振ると、ホルガーの足元が凍り付いた。
「ひっ!」
氷で床に固定されたホルガーが青ざめてガタガタと震えはじめる。
そんなに震えなくても、痛めつける趣味はないんだけどなあと心の中で苦笑しつつ、ヘンリックは続けて訊ねた。
「ホルガーさんが私に持ち掛けた投資話は、詐欺ではないんでしょうか?」
「ち、ちが――」
「本当ですか? 嘘をつくのは賢明ではないと思いますよ。私は魔法が得意なんですが、特に得意なのは水系の魔法でして。……ホルガーさんも、生きたまま全身氷漬けにされたくはないでしょう?」
にっこり笑って首を傾げると、ホルガーがガチガチと奥歯を鳴らしはじめた。
(うーん、足を凍らせちゃったから寒いのかなあ?)
能天気なことを考えながら、ヘンリックはホルガーに一歩近づく。
「ホルガーさん。あの話は、詐欺ですよね?」
「ひっ!」
「ねえ?」
「そっ、そうです! その通りです‼」
恐怖に駆られたホルガーが、ガタガタと震えながら何度も首を縦に振る。
ヘンリックは笑みを深めた。
「やっぱりそうですよね。じゃあもう一つ。……もしかしなくても、ヨアヒム君は、グルですか? あまりにも都合よくお金を貸してくれると言われたので、おかしいなと思っていたんですが、ホルガーさんと一緒になって私を騙そうとしていたのなら説明がつくかと思いまして」
「そ、それは――」
「次は右手を凍らせましょうか?」
「そうです‼」
魔法を使うふりをすると、ホルガーは半泣きになりながら叫んだ。
「その通りです‼ ヨアヒム様に、私が詐欺を働いていた証拠をつかまれて、それで脅されて、あなたを騙すように頼まれました!」
「私の元にもう一度やって来たのは、またヨアヒム君に頼まれたんですね?」
「その通りです‼」
「……ふむ。そうですか。わかりました。あとはヨアヒム君に聞いた方がよさそうですね」
ヘンリックがパチリと指を鳴らすと、ホルガーの足元と扉の氷が瞬く間に消えてなくなった。
ホルガーが、へなへなとその場にへたりこむ。
ヘンリックはのんびりとサロンの扉に歩いて行き、扉を開けると、邸に突入してきた騎士たちを呼んだ。
「ホルガーさんはこっちですよー」
すぐに、騎士たちが数名サロンに駆けつけてきた。
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